書評
草間 朋子
医療被ばくガイドライン
―患者さんのための医療被ばく低減目標値―
 
編  集:(社)日本放射線技師会・医療被ばくガイドライン委員会

■B5判・並製 ■104頁
本体価格 1,500円(税別)
2002年10月12日発行
ISBN4-86003-310-8
 
絶版(2007年12月4日)

 日本における医療被ばくは先進諸外国に比してもきわめて高いことから,(社)日本放射線技師会では専門委員会を組織し医療被ばくを低減するためのガイドラインを作成。その検証と遵守は,21世紀医療を担う診療放射線技師の役割であるとともに,医療被ばく低減を実現するための大きな目標となる。
 

 
巻末付録:医療被ばく低減目標値一覧
 
内容構成
 ・総論
 ・X線単純撮影
 ・透視・IVR
 ・X線CT
 ・核医学
 ・Q&A

X腺単純撮影,透視・IVR,X線CT,核医学の各検査領域ごとに
次の 1 〜 4 の項目について以下に記す方針に則って詳述。

1.目標値設定に対する考え方
 医療被ばく低減のための目標値を設定する際に留意すべきことは,最新の機器や最高の技術を用いて実現できる最小限の被ばく線量を指標とするのではなく,従来から行われている最適化にもう一歩の努力や改善を加えることでどこの施設でも達成が可能となる被ばく線量を目安として,わが国全体の被ばく低減を目的とした。

2.医療被ばく低減目標値とその設定根拠
 国内の広域で行われた複数の被ばく線量調査報告データやIAEAのガイダンスレベルを参考に,日本の現状に適合する医療被ばく低減のためのガイドラインを提示した。

3.線量測定方法
 低減目標値は,現在施設で行われている被ばく線量と比較するために設定されたものである。したがって,まず現状の被ばく線量を評価しなければならないが,そのためには各照射条件において,線量計などの測定機器による実測を行うか,計算による推定を行う必要があり,その実際をそれぞれ解説した。
 特にCT検査時の被ばく線量評価については,CTDIのみならず,CTDI
w,DLPの評価方法を詳述するとともに,測定データから算出する方法について例題を用いて具体的に示し,利用者の便を図った。

4.防護の最適化,線量低減方法
 目標値はあくまで医療被ばく低減のための目標値であるので,臨床上の必要性が認められればこの目標値を超えることもやむを得ないという柔軟性が求められる。しかし,頻繁にこの
値を超えるようなことがある場合には,被ばく線量を低減させるための改善を即刻行う必要がある。一方,被ばく線量がこの目標値よりも十分低く抑えられている施設であっても,できあがったX線写真の画質など,診断情報に関する臨床的価値評価を常に行う必要がある。少なすぎる被ばく線量の場合も逆に問題が内在していることを認識しなければならない。最終的には,各施設における目標値へのこのような対応の積み重ねが,同一検査でありながら施設間で大きな格差のある被ばく線量をほぼ同レベルに収束させる要素となり,全体的な医療被ばくの低減が期待されるものである。
 本書では,それぞれの検査領域で特に問題となることがらについて解決策を探り,被ばく低減のための物理的・技術的線量方法を解説した。

Q&A
 医療被ばくに関して一般の方々からの質問が想定される20のQuestionに,現時点における医療被ばくガイドライン委員会の統一的回答を付した。
 

 
関連記事
平成14年度九州放射線技師学術大会
放射線技師職,畢生のテーマ「被ばく低減」

第13回医療放射線防護連絡協議会年次大会
「高橋信次記念講演とシンポジウム」
医療被ばくを原点に戻って考える