出版によせて:放射線業務支援の手引き

 著者は診療放射線技師として国立障害者リハビリテーションセンター病院に長年勤務し、病院内で多くの医療職とともに仕事をしてきた間に、同じ患者・障害者を扱う上で欠落している知識のあることに気づいた。放射線関連の理工学技術者も患者・障害者を扱う以上、知っておくべき医療機関で働く医療者としての側面を痛感し、執筆を決意するに至ったという。解剖学、生理学、病理学、そして何よりも診療放射線技術者としての教育を受けた段階で、全く他職種の問題として振り向かれなかった運動学、動作介助、視覚障害者、言語・聴覚障害を持つ患者、さらに、高次脳機能に障害を持つ患者を扱う上で必要と思われる知識について、多くの教科書・文献を参考にし、病院の専門職としての共通言語ともいうべき基本知識を纏めた。この著書の中では、評価場面の知識から、医療職の日常業務の中で常識化している技術、特に介助・誘導、さらには手話によるコミュニケーションの方法に及ぶテクニックにわたる必要な技術を日常業務の中から引き出し、ポピュラーになっている手法等、正確を期して検証しつつ記述されている。教科書的、副読本的な使用のされ方になろうと推察するが、極めて広く、病院・施設職員のマニュアル的な使用にも耐えられるであろうことが期待される。

 Pre exposureを「撮影前評価」といい慣らされているようであるが、むしろ画像診断あるいは放射線治療等に付随した理工技術系専門職が、その業務を行う際に知っておくべき医療的側面の知識・技術と理解するべきと考えられる。医療職、特に医師は得られた画像によって確度の高い診断をすることができる、また、リハビリテーション関連職種も得られた画像と臨床症状に基づいたリハビリテーションプログラムを作成する。画像作成の技術者は、診断治療に当たる医師およびび他のスタッフの知りたい画像を作成するための知識と技術を提供することになり、その責務を果たすためには医療者の要求が何であるかを熟知している必要がある。臨床の場面に長期間置かれることで、ある程度のことは自然に会得することは可能であろうが、あらかじめ、正確な知識として身に着けているに越したことはない。

 私は、この著書を診療放射線技術を学ぶ諸氏のみならず多くの関連職種の皆さん方にも役立てて欲しいものと考え、副教科書的図書として推薦いたします。



元  国立障害者リハビリテーションセンター病院長
現 日本リハビリテーション専門学校 学校長
木村 哲彦