8年前の2000年に医療科学社より『腹部超音波検査の実践』を出版させて頂き、多くの医療従事者に愛読され重版を重ねて参りましたが,この度,新たに『最新・腹部超音波検査の実践─基礎から造影検査まで』を出版することになりました。これも皆様方の当シリーズをご愛用頂いた賜物であると,深く感謝申し上げます。
さて,21世紀に入ってからのこの8年間は,超音波検査の世界は目覚しい進歩があり,診断学において素晴らしい活躍をしております。特に第二世代の造影剤の開発に伴い,診断効果はすこぶる高くなり,ここに第二の超音波診断ブームを巻き起こすまで進化したことは,まさしく生命に対する福音であります。
歴史を顧みますと,約半世紀前に魚群探知機の応用からスタートし,大戦中の潜水艦探査としての開発などを経て,脳腫瘍の診断,乳房診断,泌尿器への応用など医療への利用に至り,現在ではあらゆる内臓器の診断に威力を発揮しております。
最近は,眼科や整形外科の分野まで診断の裾野を広げています。ここまで超音波検査が広く普及した理由としては,三つのメリットを上げることができるでしょう。
第一には,人体にほとんど悪影響を及ぼさないという非浸襲性です。X線には放射線の被曝の問題,内視鏡検査では偶発的なアクシデントを伴いますが,超音波検査はすこぶる安全であることです。第二に検査の簡便性です。機器の持ち運びのよさ,どんな場所でもすぐに作動可能なため,放射線を用いるCTスキャンやMRI検査よりも使い勝手がいいことです。第三には,超音波の原理を応用したさまざまな機能検査治療が発達してきたことです。心エコーでは各種新機能検査ならびにカラードップラーによる血流測定にまで応用されており,肝腫瘍に対しては病巣確認と同時に薬物局所投入が可能となっています。
このように今までの診断機器としてのみならず,治療の分野まで積極的に応用されるようになり,今後も超音波を用いた医療分野での発展はすこぶる期待が持てるものと信じます。
今回は,今までの超音波検査に加え,腹部造影超音波検査・治療の全てのデーターを結集してこの最新版が制作されておりますが,今後尚一層造影超音波診断のみならず治療を行う機器としての教本が出版できるまで超音波検査機器が進歩することを望みます。
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2008年3月
特定医療法人厚生会 木沢記念病院
理事長・病院長 |
山田 實紘 |
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