書 評

医療に活かす癒し術
コ・メディカルのための医療心理入門
芦原 睦/佐田 彰見:著
新書判・本体1,200円・医療科学社

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[評者]桂 戴作
 (LCCストレス医学研究所)
 本書の著者は,中部労災病院心療内科部長(兼メンタルヘルス・センター長)の芦原睦先生と,その弟子で臨床心理士の佐田彰見先生である.

 芦原先生は,現時点での心療内科医としてはトップクラスの方であり,かつ医局での教育はかなり厳しい方であって,それを乗り越えてこられた佐田先生もまたすばらしい人物であろう.本書は,お二方が自分たちの臨床経験をもとにして書かれており,難しいことがやさしく解説されていて,心くばりがあり,心温まる感じのする本である.

 さて今日,ストレス関連疾患はとみに増えていて,医療の世界での臨床心理士の要請はかなり強くなっているが,そして間もなく国家資格が付与されて,心理士が医療職として認められそうなこの時期に,本書が出版されたことは,まことに時宜をえたことといえるだろう.

 医療科学社は従来から,放射線科や,画像診断にかかわるコ・メディカルまで含めた分野での出版が多いように感じているが,医療心理士も全人的医療を視野に入れた心理臨床における重要なパートナーであり,その資質の向上を図るのに格好の書物といえよう.

 この小誌のなかに,心理テストあり,心理療法あり,そしてカウンセリング,認知療法,交流分析,自律訓練法,行動療法などについてわかりやすく書いてあり,内容は大誌の感じである.そして元来,心身医療はプライマリ・ケアの臨床で行われることが多いのであるが,本書はその手引きとしても立派に役立つ本といえるであろう.

 臨床心理士のみならず,一般医師にも,また患者さんと接する機会の多い看護師や診療放射線技師などのコ・メディカルスタッフにも,十分役立つ本としてここに推薦したい.
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