Med.Sci.Report

日本超音波医学会第78回学術集会
―画像と機能の超音波―
岡波総合病院放射線部 界外 忠之
 2005年5月20〜22日の3日間,標記学会が東京国際フォーラムにて開催された.
 初日のパネルディスカッション3「造影超音波の新しい映像手法とその臨床的有用性」では,各種次世代造影剤を用いた新しい造影法による肝腫瘤の診断に関する演題が数題見られた.どれも国内唯一の超音波造影剤レボビストの欠点である「造影効果のはかなさ」を補い,血流動態をリアルタイムに長時間観察することを可能とし,肝腫瘤の存在診断能,質的診断能,治療効果判定能の向上が期待されるという報告であったが,さて実際に次世代造影剤はいつ市場に出てくるのかというと,まったく予想がつかず「絵に描いた餅」的な雰囲気が漂い,フロアからの質問も活気に欠けた感は否めなかった.
 そのようななか,畠 二郎(川崎医科大学検査診断学)は「急性消化管疾患における造影超音波の有用性」という演題で,レボビストを用いた造影超音波による消化管壁の血流評価は,急性腹症における鑑別診断上の有用性が高いことを報告した.絞扼性イレウスではほぼ静脈より閉塞・うっ滞が始まり,時間の経過とともに動脈の閉塞が起こることから腸管壊死に到るという病態を有する.造影超音波で腸管壁の染影が得られたものは,静脈での閉塞はあるものの動脈からの流入血流が保たれており全例腸管壊死を免れている.一方,染影が得られなかった症例はすでに動脈からの血流も途絶えていることを反映し,全例腸管壊死のため腸切除を必要としたと報告した.
 このことは,今後造影超音波が絞扼性イレウスでの腸切除のcriteriaをになう可能性を示唆するものであり,非常に興味深い内容であった.今後の目標は単純性イレウスと早期の絞扼性イレウスとの造影超音波上での鑑別であり,そのためにはリアルタイムの観察が必要で,そこに次世代造影剤は不可欠であるとも付け加えた.
 腹部の超音波では消化管がブームとなってきているが,今回の学会でも随所にその傾向は見られた.今後全国規模で展開されるであろう消化管超音波検査法の標準化と相まって,ますますその波が大きなものとなることを予感させる学会であった.

(医療科学通信2006年1号)
↑このページの先頭へ