書 評

診療放射線技師に知ってほしい
画像診断
―胸 部―

櫛橋 民生:編著
A4判・本体5,500円・医療科学社

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[評者]川村 義彦
 (日本医科大学付属千葉北総病院
   中央画像検査室技師長)
 診療放射線技師が専門技術を持っているのは当然であるが,それは,主要疾患画像の読影ができ,「ここがこのように出ていなければいけない」という要求を理解したうえでキーとなる部分を的確に表現する技術のことである.診療放射線技師は,そこまでの技術を持ち合わせていなければ臨床現場で役立たないことを理解して研鑽を積んでいる.

 現に,ここにきて臨床写真の読影ができなければ専門の診療放射線技師として認められないという現実が突きつけられている.皆様ご存じのマンモグラフィの認定制度は,診療放射線技師が診療に役立つ医療スタッフの一員として認められるには読影が必須なのだということを如実に示している.

 しかし臨床現場での動きとは対照的に,この読影については診療放射線技師の国家試験ではタブー視され除外されてきていた.新たな診療放射線技師試験出題基準作成委員会が,国家試験の妥当な範囲とレベルを設定するための出題基準を作成し,紆余曲折の末「主要疾患画像の読影」が正式に日の目を見るに至ったのはごく最近のことである.これで医療現場の質の向上に弾みがつくであろうし,また世界の診療放射線技師との格差がひとつ解消されるように思う.

 このような背景もあって,この種の関連書籍は少なかったのだが,ようやく待望久しい画期的な『診療放射線技師に知ってほしい画像診断―胸部―』が医療科学社から出版された.この本の特徴はずばり各種疾患の読影・画像診断をわかりやすく解説して,しかも疾患像描出と放射線技術の対応ポイントを明確にしていることである.圧巻は疾患症例の多さと解説に最適な写真が厳選されて理解しやすく配されていることであり,さらにシェーマはこれこそが理解を確実にするためのシェーマという見本で,診療放射線技師をはじめとする読者にとってはこのうえない贈り物となっている.「所見のポイント」の項では,疾患所見の勘所を言い当てていて実にわかりやすい.さらに,「解説」の項を起こして各疾患の特徴をわかりやすく説明して読影所見だけの書籍に終わらせていないところも魅力のひとつとなっている.そして何よりもこの本の大きな特徴といえるのが「画像のゴール」の項を設定し,その疾患像の読影において描出しなければならない重要な点をあげ,放射線技術の対応でのポイントを提示している点である.

 本書は,『診療放射線技師に知ってほしい画像診断』シリーズの第一弾を飾るものとなっていて,その内容は研修医や多くの臨床科医にとっても活用いただけるすばらしい内容に仕上がっており,X線画像の診断書籍の名著の一冊に加えられるものと確信している.
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