Med.Sci.Report

第20回医療放射線の安全利用研究会フォーラム
―立場を越えた放射線治療前のコンプライアンスの見直し―
東京労災病院放射線科 小林  満
 標記フォーラムを聴講し,なぜ放射線科治療領域の事故が繰り返されるのか,改めて考えさせられた.当院における放射線治療機器導入時の官公庁届出許可申請を思い出しながら,「放射線治療開始前の不安と事故防止策」について述べる.
 構造物・遮へい等の許認可制はあるが,放射線治療開始前の現地の照射線量確認書の許認可制はないので,線量測定精度管理不備が及ぼす医療事故と防止対策書の許可申請制度導入の検討として,次の項目を掲げたい.
 @医療用具として機器導入時における,メーカーサイドの放射線治療・治療計画装置(RTP)の周辺機器の品質管理・3D画像ソフト整合性の現地実施記録の許可制度導入.
 A放射線治療開始前のモニタ単位計算の不均質補正,ICRU(投与線量)の基準点・TMR(組織最大線量比)・出力・各種トレイ係数の求め方など(項目の選択必要)現地実施の許可申請制度.
 Bメーカーサイドの放射線治療装置の開発による事故防止対策の推進と法令化(医療用具)(できるだけ簡単な操作・安全情報などのシステム開発)
 (例)コンセプトRTPなどの開発:IGRTからVGRT→SGRTそして新たなDGRT(dose guided radiation therapy)システム開発により治療計画が簡便化され,腫瘍専門医師と専門スタッフ間との意思疎通の解決,治療線量の最終伝達・治療部位における必須情報伝達の不備の問題点,不注意とうっかりミス防止などの構築システムの安全基準区分制度導入を検討.
 また,放射線治療スタート後の装置・ソフトのケア緊急対応の解決策として治療装置・治療計画ソフトなどの医療用具製造元・販売元からのリモートによる事故・故障・修理の自己診断システムに力を注いでいただきたい.
 世界的に類を見ない急激な高齢者社会が始まっているわが国では,おのずと治療需要患者比率が高くなることが現実化しているとの発表があったが,専門資格制度の拡大・周知はもちろん,「治療前の副作用説明および事故防止対策説明書の義務」まで患者様に提示しなければならない思い切った制度化(機能評価)が望まれる.
 「患者の立場」から曾田昭一郎氏が「難題山積」に理解を示したが,まずメーカーも取り入れた治療スタッフ不足・マンパワーなどの諸問題,専門分野の立場を越えた第三者機関への定期的報告義務・監督監査また情報公開制度を採り入れ,患者様が安心して放射線治療を受けられることを日々研鑽しなければならないと改めて痛感した.

(医療科学通信2005年2号)
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