Med.Sci.Report

日本総合健診医学会第33回大会
―Health evaluationの先に―
国立病院機構名古屋医療センター 遠藤 登喜子
 総合健診医学会が2005年1月28〜29日,「癒しの未来を求めて」をテーマとして大阪国際交流センターにて開催された.
 本学会はひとが健康に生きることを目標とし,病気の早期発見,早期治療がその目的をよりよく実現できるとの理念で「health evaluation」に取り組んでいるものである.具体的にはがんと生活習慣病のevaluationが主な対象であるが,今大会では,特別講演に「糖尿病診断の治療と現状」「肥満と生活習慣病」を取り上げるとともに,がん検診では消化器がんと乳がんをシンポジウムに取り上げ,それぞれの現状と課題について,熱のこもった討論が展開された.
 特に,乳がん検診では2004年4月にがん検診実施のための指針が改定され,40歳以上にマンモグラフィを中心とした検診を行うこととなったことを背景に,各地での取り組みとその展望が討論された.マンモグラフィ検診に取り組んできた横浜市の取り組みでは教育研修によって再撮影率,要精査率の低下が,二次読影を行うことにより視触診単独検診の約2.5倍の発見率が得られたことが報告された.また,3人のシンポジストから超音波とマンモグラフィを用いた検診・健診が報告され,視触診+超音波の組み合わせではなく,マンモグラフィ+超音波検診の有効性が高いことが強調された.これらの報告で強調されたことは「精度管理」であり,マンモグラフィではマンモグラフィ検診精度管理中央委員会の行う講習および画像評価が有効であることが報告されるとともに,超音波検診でもマンモグラフィと同様の精度管理の取り組みが進められていることが報告され,これからの検診ではマンモグラフィと超音波の組み合わせが推奨される方向が示された.会場にはこれから乳がん検診を変えていこうとする参加者の熱気が満ち,健診でこそ精度管理の充実した検診が実現できるという先進的意見がフロアから述べられた.
 乳がん検診は総合健診のほんの一部ではあるが,health evaluationの先に健康生活を実現することを目指すとする学会の目標に向かって,確実な一歩が示された.

(医療科学通信2005年2号)
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