書 評

緊急被ばく医療テキスト
青木 芳朗・前川 和彦:監修
A4版・本体4,700円・医療科学社

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[評者]玉井  勲
 (慈泉会相澤病院放射線科/放射線管理士)
 緊急被ばく医療は実践されないことが望ましい.しかし人為的要素の大きい原子力発電所事故やテロが発生している昨今,いずれ大きな事故が発生すると思われる.この『緊急被ばく医療テキスト』は,われわれ一般医療病院従事者にとっても,放射線被ばくについて考え直す機会を与え,記された内容を己の知識とすることにより万一の事故にも対応できるようにしてくれるであろう.さらに,応用編が先に置かれているため非常に使いやすい.
 被ばく事故が発生した場合,本当は小さな事故でも大きく扱われて報道され,一般国民の疑惑と恐れをかきたてる.施設にも相談電話はあるが,的確な数値を出して返答することはままならない.本書を用いることにより,障害発生の的確な数値を提示しての対応が可能になる.

 事故が起こって初めてわかったことであるが,一般の人が外部被ばく・内部被ばく,外部汚染・内部汚染を一緒に考えることは大きな問題となる.本来はわれわれが状況判断し周囲の人々のパニックを抑えるためにカウンセリングを行うべきであろうかと思うが,勤務の関係で思うようにうまく行動できないのが実際である.したがって,今後緊急被ばく医療に対する認識を高め,各都道府県知事から任命を受け行動できる状態にまでする必要性を痛感する.放射線医学総合研究所と広島大学など重要な機関では最新計測・治療が行えるが,将来的には各ブロックで1か所はそのような施設の共同建設を行い万事に備えられるように対応すべきではないだろうか.

 日本人の放射線に対する敏感さをわれわれはもっと親身になって考える必要があると思われる.本書は大変読みやすく理解しやすいので,多くの診療放射線技師に読んでいただきたい.
 最後に放射線管理士として,このようなテキストを作成していただいた諸先生にお礼を申し上げるとともに,本書をわれわれ放射線管理士のマニュアルとすることを提案したい.
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