Med.Sci.Report

第31回日本低温医学会総会
―Break-through in cryomedicine―
東京慈恵会医科大学附属青戸病院 松原  馨
 第31回日本低温医学会総会が,2004年11月18〜20日の日程で原田潤太大会長(東京慈恵会医科大学附属柏病院放射線部教授)のもと,東京品川の東京コンファレンスセンターにて開催された.今回の総会は,国際色をさらに強化するため「CRYOMEDICINE 2004」として,IIR(international institute of refrigeration)およびISC(international society of cryosurgery)との国際学会共催で行うことになり,アメリカ,イギリス,ドイツ,ロシア,イスラエル,中国,韓国など海外からの演題も数多くエントリーされ,多彩な内容と盛り上がりが感じられた.
 日本低温医学会は1974年に創設された「低温・凍結保存,凍結手術,凍結免疫」を基本とする伝統ある医学会である.近年の研究技術・画像診断装置の急速な進歩と相まって,さらに大きく進化している現状において,今回の「明日を拓く低温医学―Break-through in cryomedicine―」というメインテーマは,低温医学をさらに推し進めていこうとする意図が感じられた.
 初日の「International Evening Seminar of Cryomedicine 2004」では,低温医学を積極的に推進する国内外の先生方によるセミナー形式の講演が8演題行われ,最新の低温医学の現状や凍結手術の情報が得られ,改めて低温医学の幅の広さ,奥行きの深さ,可能性の大きさを痛感させられた.ランチョンセミナーのIssac Meller(イスラエル)の「Fifteen years of bone tumor cryosurgery」では,骨腫瘍部を削り取った部位に液体窒素を一定時間直接注入し腫瘍細胞を叩くという手術が紹介され,経験症例の多さと技術の高さに驚かされた.また,招待講演のPatrick E. Sewell(アメリカ)の「MRI guided cryosurgery」では,オープン型MRI装置を凍結治療のモニタに利用したさまざまな部位における腫瘍の治療の実践が紹介され,わが国での保険適用等の問題が早期に解決される必要性を痛感した.そのほかにも,凍結技術の細胞レベルの研究や臓器移植のための低温保存など興味深い内容の講演や発表があり,3会場を巡り歩く参加者の姿が数多く見られた.
 最後に,今回の日本低温医学会総会を通じて低温医学のすばらしさ・驚きを感じられたほか,今後のさらなる可能性に大きな期待が持てたことが何よりも収穫であった.また,日本における低温医学の発展に向けて,早期に行政側の理解と協力が得られるよう切に要望したい.

(医療科学通信2005年1号)
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