Med.Sci.Report

北米放射線学会(RSNA)2005
―今回のトピック―
京都大学医学部放射線医学教室 小山  貴
 大統領選としきりと取り沙汰されるテロの噂が飛び交うなか,世界最大の参加者を誇るといわれるRSNAでは,今年も6万人の参加者があったようである.中国からの参加者と発表の増加が目立ったが,経済的な発展に裏打ちされた事象だとすれば,この傾向は今後も持続するだろうと思われる.近年のRSNAでは例年,molecular imaging,MDCT,機能的MR画像の躍進やMRでの全身撮像など,毎年それなりのトピックがあったと思うが,今年はMDCTにおいては16列から,32列,64列といった進歩,molecular imagingや機能的MRの腹部への臨床応用と,従来の技術の展開が主体であったように思われた.また撮像されたデータのワークステーションにおける解析の方法も前年よりも進歩していると思われ,形態診断から機能診断へという大きな潮流を感じさせるものであった.
 今回のRSNAで,コンピュータ展示の導入による発表形式の変化は注目を集めたトピックといえよう.試験的とされるものの,中枢神経および胸部領域の教育展示と示説発表はすべてがコンピュータ展示とされ,他領域での従来のプリントによるポスターとのコントラストが印象的であった.コンピュータ展示では同一箇所で座りながら,多くの展示を見ることができるというものの,従来の展示のように視覚的に興味を抱くポスターを選択的に閲覧するということが難しいので,展示を作成する側も従来とは異なったストラテジーが要求されると思われた.
 新たな造影剤としては,日本ではいまだに認可されてはいないものの,リンパ節内部のマクロファージに取り込まれる陰性造影剤USPIO(ferumoxtran)は,MRによるリンパ節転移の診断能を飛躍的に向上させる特効薬として期待されており,いくつかの新たな発表が見られた.Harisinghani MGとBarentsz JOらによる2003年の“New England journal of Medecine”の論文も記憶に新しいが,彼らによる教育講演は,リンパ節転移の従来の画像診断の背景,問題点,新たなMR診断の方法を論じて注目を集め,教育講演にはめずらしく非常に多くの質問がされていた.著者のHarisinghani先生に直接おうかがいしたところ,アジアにおいては結核によるリンパ節腫大の症例が多いため,USPIOの日本での認可は非常に大きな臨床的意味を持つだろうとのことであった.今後,日本においてもこの造影剤の臨床応用が期待される.

(医療科学通信2005年1号)
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