Med.Sci.Report

北米放射線学会(RSNA)2005
―RFチャンネル数の増加でMR画質向上―
東京慈恵会医科大学放射線医学講座教授 福田 国彦
 北米放射線学会は参加者6万人の世界最大の放射線学会である.CT,MRI,PET,ITシステムなど多くの
新しい知見が発表される.本稿では,マサチューセッツ総合病院のDr. SorensenによるMR画質向上のための信号雑音比(SNR)改善に関する学術発表を紹介する.
 SNR改善は静磁場強度を上げることで可能である(例えば1.5Tから3T)が,ラジオ波チャンネル(RFチャンネル)数を増やすことでも改善が期待される.研究の目的は,静磁場強度を強化する代わりにRFチャンネル数を増加(例えば8から96個のRFチャンネルに増加)させることで,高磁場化に匹敵する効果が得られるかを検証することである.研究には,同一ボランティアの頭部を対象として1.5Tと3T装置(Siemens社のSOMATOM AvantoとTrio)とで撮像を行い,脳のSNRを測定した.1.5T装置では1,8,12,23個のRFチャンネルで撮像し,3T装置では1,8,12,32個のRFチャンネルで撮像した(抄録の段階で96個のRFチャンネルは完成していなかったが,学会の発表では96個のRFチャンネルの高分解能画像データが示された).その結果,大脳皮質については,23個のRFチャンネルを用いた1.5T装置は,1個のRFチャンネルを用いた3T装置のほぼ3倍の能力を持ち,8個のRFチャンネルの3T装置に匹敵した.脳の深部についても,1個のRFチャンネルの3T装置を凌駕したが,8個のRFチャンネルの3T装置には及ばなかった.一方,同じ3T装置でも,20個以上のRFチャンネルは12個以下と比べて明らかに画質が勝っていた.これらのデータはSNRの向上においてRFチャンネル数の増加が超高磁場化と同等かあるいはより有効であることを示しており,低価格で超高磁場装置の機能を得られる可能性を示唆するものである.

(医療科学通信2005年1号)
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