Med.Sci.Report

第32回放射線技術学会秋季大会
―マンモグラフィのデジタル画像とアナログ画像の評価基準―
藤田保健衛生大学病院放射線部 井田 義宏
 10月21〜23日に日本放射線技術学会第32回秋季大会が開催された.そこで非常に注目すべき研究発表があった.大阪府立急性期・総合医療センター・船橋正夫氏の「デジタルマンモグラフィ評価基準(精中委)の問題点」である.
 マンモグラフィの精度管理中央委員会(以下,精中委とする)は,わが国で唯一,画像診断の撮影から読影まで一貫した標準化を行った組織であり,筆者もその功績は偉大なものと思っている.また,筆者自身マンモグラフィ検査には携わっていないので,実際には筆者の考えている以上に精中委の医療への貢献度は大きいと予想される.
 はじめに述べておきたいのは,(本人にも確認済みであるが)船橋氏はマンモグラフィに関してデジタル画像がアナログ画像に勝るとは考えていないということである.あくまでも評価基準がおかしいと述べているのである.問題となった評価基準は,筆者からみてもいくつか疑問点があり,今回の発表はそれを明確に理解させた.船橋氏があげた具体的な問題点は,第一にアナログ画像の弱点を補うための高輝度シャウカステンの使用がデジタルに対しても前提となっていることである.これはデジタル画像のダイナミックレンジの広さと,コントラストのカーブをほぼ任意に設定できる利点を無視している.第二に評価基準ファントムの評価点数がデジタルとアナログで異なる点である.基本的な画像特性を臨床利用する際に,臨床データでは比較が困難なので共通のファントムを使用することがある.その際,受像系によらず評価基準は一定にすべきであるが,今回のデジタルの評価基準は評価点のレベルが異なっている.これらの2点が,物理評価と臨床画像評価の橋渡しをする際の矛盾となっている.
 今回の船橋氏の発表は別の側面からも意義があった.通常,実績のある人や組織からの発言(発表)はある論理から構成されており,他の側面から見た論理に問題となる部分があった場合,なかなか公の場で反論されることはない.今回,公の学会発表として問題点を示し議論を求めたことは,技術学会としても実績・権威などを脱却した真理追究の理想的な形を示したといっても過言ではないと考える.
 今後この問題を学会誌等で誌上討論など行えばさらに広く検討できるのではないかと感じた.

(医療科学通信2005年1号)
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