書 評

医療法における放射線遮へい計算
申請実務マニュアル

熊谷 孝三:編著
B5版・本体9,500円・医療科学社

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[評者]藤田  透
 (日本放射線技術学会学会長)
 現在の医療から放射線の利用をなくして考えることはできず,医療の発展の陰には必ずと言っていいほど放射線診療が貢献している。放射線利用の進歩とその安全管理とは車の両輪をなさねばならず,いずれも優先も疎かにもすべきでないと言われる。安全管理をするうえで放射線診療施設の設計は重要であり,利用実態に即した必要で十分な施設設計は今後の厳しい病院経営のポイントとなる。

 今回上梓された『医療法における放射線遮へい計算申請実務マニュアル』の著者はわが国における放射線治療技師の第一人者であり,永い臨床経験に基づく豊富な知識と指導力では右に出る人はおらず,本書はそのような背景のもと,ひとつの集大成として執筆されている。すなわち,著者が経験した既存施設廃止から新病院立ち上げに係る設計・申請について,あらゆるケースを想定した内容となっている。

 第1章は放射線診療施設の規制基準,第2章は放射線診療の許認可手続き,第3章は診療用エックス線装置,診療用高エネルギー放射線発生装置,診療用放射線照射装置および診療用放射性同位元素の届け出の記載例,第4章は高周波利用設備許可申請書の記載例,第5章は通知様式の記載例と注意事項,第6章は医療法の手続き様式,と6章より構成されている。また,付録にはエックス線診療室等の構造設備に係る遮へい計算として,各診療室の遮へい計算データが示されている。500ページを超える大作であるが,内容の多くは記載例・手続き様式の実例であり,著者のこれまでのご苦労が凝縮された「実務マニュアル」となっている。本書の序にも著者が記すとおり「必要な箇所を参照していただき,そのまま真似て記載していただければよいように工夫」されているので,要領よく申請のポイントをつかむことができよう。また,他の優れた手引き書も参考にしたということで,許認可申請のノウハウは本書に網羅されていることになり,診療現場には必携で,バイブルとなる書である。
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