新臨床研修制度が始まって,半年
昭和大学横浜市北部病院
櫛橋 民生(放射線科教授)
浮洲龍太郎(放射線科講師)
武中 泰樹(放射線科助教授)
 われわれの昭和大学横浜市北部病院にも20名の研修医が決まり,病院内の研修医棟の1部屋とともに研修医生活がスタートしています。

 開院は2001年4月,昭和大学6番目の附属病院で,661床です。大きな特徴の一つは完全フィルムレス,ペーパーレスで運用されており,全画像検査(1日380〜400件)が即時読影され,CRで9分,CTは14分,MRIも19分平均で読影レポートが配信されています。大きな利点もありますが,逆に若い先生がレポートばかり見ているという欠点も懸念されています。種々の理由より,短期間ですが,研修医全員が順に,放射線科で研修することになりました。日常の読影室で日々指導にあたる先生方の彼らの活動ぶりを聞くことが最も有意義と思われ,2人の先生方に様子を伝えていただきます。

(櫛橋 民生)


 当科は教授や院長の考え方のおかげで,短期間ではあるが,ほぼ絶え間なく若い先生が研修を受けている。彼らを眺めていると,いくつかの共通点が浮かび上がってくる。

 まず,考え方がスマートで,勉強の効率性をかなり重視している。学びたい気持ちで一杯ではあるが,押し着せがましい教育は受け付けない。ほとんどの研修医は研修しながら,入局先を模索している。彼らの横のつながりは深く,情報交換を絶えず行っている。ゆえに指導医や医局は細かく観察され,いろいろな視点から値踏みされることになる。

 そんな彼らにどうすれば放射線科を研修してよかったと言ってもらえるか,というのはかなり難しい問題である。対応の一つとして,私は特に研修の前半は彼らの希望を聞くように意識している。さらに毎日,その日の研修の感想や,今後の希望なども書いてもらう。彼らの考えや行動を分析して,ニーズに合わせた効率のよい指導を目指すためである。

 彼らのニーズに合わせていると,たまに研修のレベルを超えたディープな領域に入ってしまうこともある。そんなときも軌道を修正せず,指導を続けることも多い。無責任に聞こえるかもしれないが,彼らにとって,勉強したら“?”が“!”になったときの高揚感は,決められた症例から知る型どおりの学習形態よりよほど貴重である。到達目標をかかげて学ぶことも大切だが,指導側が目標達成に縛られ柔軟性を失うのも考えものではなかろうか。

 おっと,研修医がハンターのような敏捷な目つきでこっちを見ている。さて,今日は何を教えようか……。
(浮洲龍太郎)


 新臨床研修医制度では研修医は病院を選び,期間中は特定の科に所属しない。この制度のもとでは,放射線科には研修医がいなくなるとささやかれていた。だが,現在,われわれの読影室には常に研修医がおり,皆とにぎやかにやっている。

 これは病院幹部の英断による内科研修の一環に放射線科が組み入れられたことによる。放射線科の必要性を認めてもらったことで道が開けたと考えている。具体的には朝7時〜夜7時までの全画像検査の即時読影,残り12時間のオンコールといった病院の実状に即したサービスの提供と,積極的な学会活動が評価されたものと自負している。

 実際の研修では,研修医は教育を受ける権利がある点と雑用係にしないことを徹底した。ある程度の到達目標を掲げてはいるが,固定したカリキュラムは設けていない。個々の研修医の個性や希望を取り入れ,いかに「画像診断を楽しむのに放射線科を利用するか」に主眼を置いて指導している。研修医には毎日その日の感想を提出してもらい,問題点は即座に対応するようにした。

 毎月行われている病院長との個人面談では率直な意見が述べられ,病院の研修コーディネート会議に反映される。当然教育する側の評価も得て,常に指導医側も自己研修を繰り返すことが重要となる。

 良い研修が行われている施設は病院の質も向上し研修医も集まる。患者からの評価も同様となろう。この流れのなかで積極的に研修の質の向上に寄与することが,科として生き残っていくうえで肝要となろう。
(武中 泰樹)
 
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