Med.Sci.Report

第63回日本癌学会学術総会
シンポジウム
―放射線治療に期待されるもの―
久留米大学医学部放射線科 早渕 尚文
 2004年9月29日から10月1日まで福岡市の福岡国際会議場など3か所で標記学術総会が開催された。近年のがん治療における放射線治療の重要性の高まりを受け,シンポジウム「放射線治療に期待されるもの」が10月1日の午後から行われた。冒頭に座長の京大・平岡真寛は「放射線治療技術の進歩,普及で放射線治療の可能性が飛躍的に高まった。一方,QA/QCの確立が今ほど求められている時期はない」と述べた。

 6人のシンポジストのうち,白土博樹(北大)は四次元放射線治療を,溝脇尚志(京大)は強度変調放射線治療を,鎌田正(放医研)は重粒子線治療を,それぞれ簡単に紹介した後,いずれもすばらしい治療成績が得られていることを報告した。これら3人の報告はすべて近年の放射線治療のコンピュータを含めた物理学的な進歩が治療成績に反映したものである。一方,秋元哲夫(群大)は放射線生物学的なアプローチの重要性を指摘したが,近年治療成績に結びつくようなこの分野の進歩がなされていない現状も報告された。また,早渕は患者の状態をよく把握すれば,現在普及している放射線治療装置でも,これからの超高齢化社会におけるやさしいがん治療が可能であることを述べた。

 これに対し,早川和重(北里大)は最近の放射線治療事故の多発を受け,放射線治療のQA/QCの重要性について述べた。これについては,早渕と白土から現在放射線治療関係の5学会が共同で進めている「放射線治療安全管理委員会」中間報告の進捗状況や,準備が進んでいる放射線治療品質管理士制度の概要について追加発言がなされた。

 最終日の午後に行われたため,残念ながら会場の出席者は多いとは言えなかったが,熱気に包まれたシンポジウムであり,座長の辻井博彦(放医研)から盛り上がったシンポジウムに対し,御礼の言葉が述べられた。

(医療科学通信2004年4号)
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