Med.Sci.Report

日本ハイパーサーミア学会第21回大会
―新たな展開を目指して―
京都大学医学部放射線科 坂本 匡人
 日本ハイパーサーミア学会が2004年9月24〜25日の2日間,京都市の京都パークホテルにて開催された。併せて市民公開講座も同市のキャンパスプラザ京都にて開催された。

 一般演題として60余りの基礎・臨床演題が発表され,シンポジウム・ワークショップではハイパーサーミアの適応の現状や成績および今後の臨床応用が期待される技術について活発な討議がなされた。

 そのなかでも,産業医大の今田肇先生をはじめとする方々から提唱された「ハイパーサーミアと放射線治療との併用の有用性は認めつつも,今後のハイパーサーミアの生き残りと発展のためには化学療法との併用を模索し化学温熱療法を確立していくべきではないか」という考え方は印象的であり,産業医大ではその考えに基づきハイパーサーミアがさまざまながんに施行され,その有用性が報告された。化学温熱療法は放射線照射野内再発症例や化学療法抵抗性の腫瘍に対して有効と思われ,今後の発展が期待される。

 また,従来ハイパーサーミアは,一度施行されると加温部位に熱耐性が生じるため,施行頻度は1週間に2回までが適当とされてきたが,加温による生体の免疫能の賦活や,いわゆるマイルドハイパーサーミア(加温を41℃程度までとするハイパーサーミア)の効果が確認され,むしろ連日施行したほうが高い効果が得られる可能性があることが生物学的に指摘された。同時に,実際の臨床で1週間に3〜5回の温熱療法を施行し良好な治療成績を上げている施設からの報告もあり,ハイパーサーミアの新しい展開の方向が示唆されたと考えられる。その一方でハイパーサーミアに対する保険点数が非常に低く設定されているために,そのような頻度でハイパーサーミアを行うために必要なマンパワーや治療機器の導入が困難なこと,さらに,適切な施行回数や頻度,併用療法が確立しておらず,ハイパーサーミアの施行にあたって必要となる医療資源の見通しが立てにくいこと,などの以前から指摘されている問題も改めて浮き彫りとなった。

 虎ノ門病院の黒崎弘正先生から,ハイパーサーミアを行っている施設にがん治療のセカンドオピニオンとして適応の確認を求められる機会が増えていることも報告された。この背景には,患者側の「治療を選択したい」という意識の高まりがあるものと思われる。しかし,ハイパーサーミアを施行している施設でさえ上記のような理由でそうした要求に十分な対応をするのは難しいのが現状であろう。このような残念な状況を改善するためにもエビデンスの蓄積と医療機関内外へのアピールの必要を痛感した次第である。

(医療科学通信2004年4号)
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