Med.Sci.Report

第19回医療放射線の
安全利用研究会フォーラム
―放射線被ばくを考える―
社会保険新宿健診センター放射線科 田中 宏文
 2004年9月17日,標記フォーラムが行われた。「X線CTにおける患者被ばくの管理を考える」をテーマとして,CT装置メーカー国内3社,海外メーカー3社,医療現場の使用者などを交えてそれぞれの提言がされた。

 最近のマスコミ報道から医療被ばくについて,今一度考えるべきであるとの指摘がなされている。特に2004年2月にLancet論文について報じられた後,専門誌はもちろん新聞,一般雑誌,インターネットなどで被ばくに関する記事が社会面をにぎわしている。国連科学委員会(UNSCEAR)の調査書によれば,全世界の医療X線検査におけるCT検査は約5%程度に相当するが,集団線量に占める割合は約34%に達する。有用性を考慮すれば単純に判断はできないが,やはり無視できない数字である。

 装置メーカー側の開発部門では,高画質を保ちつつも線量を低下させる技術を考案している。軟線除去フィルタの開発や検出器効率の向上,画像作成ソフトの改良,体格体厚補正機能,AEC(auto exposure controller)などが紹介された。これらの技術はマニアックな領域とされ,あまり深く理解されないことがあるが,実情はCT使用時における不必要なリスクを装置設計で取り除くことができ,いわば安全装置とも呼べる。安全機能は多くの工業製品では当然のように設計されているものの,医療機器ではまだ不備な部分が多く,医療X線装置には操作卓上に線量表示されるものはわずかである。いったいこの検査に対してどの程度の線量が使用されたのか? どの程度被ばくしているのか? 随時表示されることは被ばくを考えるうえで重要であると思える。

 他方,すばらしい安全設計がなされた装置であっても使用する側の「使い方」によって被ばくの程度が大きく異なるのも実情である。近年の医療施設でデジタルX線装置の普及は飛躍的であるが,必ずしも被ばく低減に貢献したとは言いがたい。一般にデジタル画像は線量が多いほど高画質をもたらすため,設計者の意図が反映されず本末転倒である。

 放射線被ばくを考えるにあたり装置設計と装置使用について着目したが,X線検査そのものは不要なものでは決してあり得ない。特にCT検査は緊急時に絶大な力を発揮し,多くの国民が救命されたことは忘れてはならない事実である。有用であるがために今後も依頼件数は増えるが,線量管理を怠らず適切に使用することが継続的な課題と考える。

(医療科学通信2004年4号)
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