Med.Sci.Report

第13回日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)
―治療につながる超音波診断―
筑波大学臨床医学系 東野英利子
 標記会議が2004年9月11,12日に大阪大学大学院医学系研究科腫瘍外科・玉木康弘先生を会長にホテル阪急エキスポパークで開催された。この会議は実際に臨床の場で活躍している中堅および若手の医師,技師を中心に800余名の会員を有しており,年2回の会議では活発な議論がなされる。また最新の知識,機器に関する情報を提供する場でもあり,出席者は310名ほどであった。今回も一般演題,症例報告のほかにワークショップ2題,シンポジウム,教育講演,ランチョンセミナーと盛りだくさんであった。1会場で行われたために聞き逃すことがないこともよかった。

 特に印象に残ったものの1つは超音波誘導下生検に関するワークショップである。今年の4月から画像誘導下吸引式組織生検が保険適応となり,超音波誘導下に行う装置が急速に普及している。ランチョンセミナーでは実際の手技のデモンストレーションも行われたが,ワークショップでは今まで行われてきた細胞診,太針生検とどのように使い分けるか,施行している本人たちからの経験に基づく発表があった。細胞診のみで乳癌の手術をしてよいのか,吸引式生検は太針生検にとって代わるかなどがこれからも話題となっていくであろう。どの生検法もそれのみでは100%正しくはなく,その基礎となる超音波画像と合わせて,より適した生検法を熟練した技術で施行することが大切であると考えられた。

 この会議ではいつも,医療超音波とは直接関係はないが,「音」や「乳房」などに関係する特別講演が行われる。何をやるかを決めるのは会長にとっては頭の痛いことであるが,出席者の楽しみのひとつである。今回は国立民俗学博物館の寺田吉孝氏による「南フィリピンのゴング音楽」という講演があり,いつもは超音波という聞こえない音ばかりを扱っている私たちは異国の文化を象徴する音に聞き惚れた。

(医療科学通信2004年4号)
↑このページの先頭へ