臨床科医の評価
 乳腺外科と整形外科で,電子カルテとモニタ診断についての感想を聞いてみた。

高橋 満・整形外科部長
 整形外科の高橋部長は,診察室に高精細液晶モニタを2台入れている。単純写真の画質については当初危惧していたという。「上手い技師が撮ったフィルムには叶わないですが」と断りながら,「高精細液晶モニタだと,拡大にも耐えられるし,それほどストレスを感じることはありません。ただ,電子カルテ用端末のCRT画像だと我慢できるというレベルです。キレが違います。高精細のCRTだともっといいのだろうとは思いますが,画面の寿命の問題から液晶を選んだのでしょう」と評価した。また,「過去画像との比較が簡単にできることです。2台のモニタで過去画像と現在の画像をページングでシンクロさせながら経過を見る場合には非常に重宝している」として,その画像を実際に見せてもらった。

内田恵博・乳腺外科医師
 画像については,乳腺外科の内田医師も「表示も早いし,画質も問題ありません。CRを使っていれば,モニタ画像で拡大したり,コントラストをつけるとか,以前からやっていることですから」という。両医師とも,画質と表示速度についてはストレスを感じることはないようだ。
 単純撮影やマンモグラフィの場合は,撮影を終えた患者が戻ってくるころには画像が臨床医のもとにきているので,それを見ながら説明ができる。画像診断医のレポートは後からになるが,この時点でダブルチェックになる。
 また,医師や他の医療スタッフとのやりとり,コミュニケーションも従来に比べて増えたという。電話連絡が多くなったほか,画像を複数箇所で見ることができるので,どこでもカンファレンスができる。少人数であればナースステーションや診察室がカンファレンスルームになる。画像やデータを呼び出して説明することで,コ・メディカルの理解度は格段に高まる。画像の見方を教えたりもしているので,理学療法士も画像を見るようになったという。
 電子カルテの使い勝手には不満もあるようだ。例えば生理検査データのひとつの数値だけを見たいという場合など,かつてはカルテの束のなかから直感的にパッとめくるとその数字が目に飛び込んできたという感じだったものが,電子カルテだとメニューをたどっていかなければならない。そのため,よく使うデータにたどり着きやすいようインデックスをつくるなど,各医師がカスタマイズを行って対応している。
 また,キーボードによる入力作業がある分,仕事量は増えているようだ。「かつては外来で1日100人をみていたことがあります。今は1日50人です(内田医師)」。それでも,電子カルテは「将来的には,病院の形態そのものを根本的に変えてしまうかもしれません(同)」とそのインパクトはかなり大きいようだ。
(医療科学通信2004年3号)
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