Med.Sci.Report

日本超音波医学会第77回学術集会
―明日への研究の活力を求めて―
東京慈恵会医科大学附属青戸病院 放射線部 松原 馨
 日本超音波医学会第77回学術集会は,2004年5月17〜21日の日程で,伊東紘一大会長(自治医科大学)のもと宇都宮にて開催された。

 今回の学術集会は,同期間に合同で開催された第7回アジア超音波医学生物学学術連合国際会議および15〜16日の日程で行われた日本超音波検査学会と超音波に関する一連のイベントとして行われた。私事になるが,今開催地は筆者が日超医での発表を初めて行った場であり,尾本良三先生に随分フォローしていただいたことを懐かしく思い出した。
 さて,今学術集会は3つの学会の合同開催であったため,盛りだくさんな企画が組まれていた。まず,日超検査学会との合同開催であるため,「教育セッション」では基礎・初級・中上級の3レベルに合わせ,それぞれのレベルごとで5つの領域にわたる教育内容が用意されるなどきめの細かい心づかいが感じられた。また,「新技術開発セッション」では,造影超音波画像による乳癌のセンチネルリンパ節同定法の研究をはじめとする6つの継続中の研究テーマと3つの新規研究テーマに関する発表がされた。さらに,International Congressを色濃く反映した国内外の先生方による多彩なSpecial Lectures,Symposiumが数多く催され,参加者にとってはどの会場に足を運ぶべきか迷うところであった。
 それから,忘れてならないのが,旬の話題を取り上げて行われるランチョンセミナーである。ある意味,ランチョンセミナーを見るだけで,現在の会員の関心の対象や今後のベクトルが感じとれる。今回も,現在の超音波界の流れを反映するように「心臓領域におけるReal-Time 3D(4D)」や「新しい超音波造影剤を用いたContrast Imaging」が中心であったが,新技術である「Real-Time Tissue Elastography」は興味深いものであった。
 Real-Time Tissue Elastographyは,探触子を用いた用手圧迫による組織の変形の度合いをUS画像上にカラースケールで表示し,組織の弾力性を客観的に把握することができる画期的な技術である。これまで熟練を要した乳腺腫瘤形成性病変の弾性に対する判断が色で表示されることで,誰でもある程度客観的に判定できるようになり,今後の応用範囲は大きく膨らむと思われた。例えば,乳腺において触診でも触知できない,Bモードでも認識しがたい腫瘤を形成しない非浸潤癌の場合に,硬くなった乳管が青色に描出されれば,早期発見につながり治療効果の向上に寄与できるのではという期待を持った次第である。
 今回の学術集会も多くの情報を得られ,有意義なものであった。
(医療科学通信2004年3号)
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