書 評

[診療画像検査法]
<新編> 臨床医学概論

金森勇雄/他:編著
A4判・本体4,000円・医療科学社

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[評者]藤間 英雄
   (社団法人埼玉県放射線技師会会長)
 この大部の学術書は,編著者の金森氏を筆頭とする,いわゆる金森軍団のシリーズ診療画像検査法のたしか11冊目になるはずである。私は今,この書評を書くにあたって,上梓なった本書を前に呻吟している。本書の奥行きが深すぎて,何から紹介してよいか,その取っ掛かりを見つけるのに苦労している。

 『新編 臨床医学概論』は編著者らが20年以上にわたり,診療放射線技師の学術書の大系化を目指してきた診療画像検査法シリーズの集大成とも言うべきものである。
 編著者の金森氏らは,過去のシリーズで,『X線CT検査の実践』,『MR検査の実践』,『腹部超音波検査の実践』などモダリティ別に,また『X線撮影法』,『X線造影検査の実践』,『核医学検査の実践』,『放射線治療科学概論』など診療別に,さらに『乳房画像検査の実践』や『医用放射線計測学』,特殊領域の『歯・顎顔面検査法』と網羅し,ついに本書『臨床医学概論』にたどり着いたことになる。
 私は,シリーズ最初の出版から編著者らからご案内をいただき,すべてのシリーズが机上にある。怠け者の私は,すべてを読破する根気もないくせに,放射線技師としてのDNAがそうさせるのか,なぜか傍らにあるだけで安堵するのである。
 そして,ものを書くときに,必要に応じてシリーズを紐解き,つまみ食い的に読み飛ばし納得するのだ。こんな利用法は,編著者らには大変失礼なことではあるが,至極便利である。
 自分のことはさておき,わが埼玉県放射線技師会の諸兄には本シリーズの購入を勧め,さらに,編著者ら軍団のメンバーを講師にお呼びして,十分な時間をとったとは言いがたいが,有料のセミナーを続けてきた。会員の書棚には,シリーズの大半がそろっているはずである。
 今,われわれ技師の世界には,生涯学習が嵐のごとく押し寄せている。それらはなんの脈絡もなく,ただ「技師格」取得のために行われていると思えなくもないが,果たしてどれだけ実効ある生涯学習になっているか疑問ではある。もっと早くに,本シリーズの出版に合わせて生涯学習が継続的に行われていたら,今あわててやることもなかったろうにと残念に思えてならない。
 話題の「技師格」も,不思議なことに,これだけの著作をモノした軍団の誰もがマスターをとったという話を聞かない。これだけの大仕事を成し遂げた面々が「マスター」に該当しない資格制度なんて,どこに意義を見つけろというのだろうか。
 生涯学習システムを本来の目的のために再構築するならば,本書を代表とする過去の診療画像検査法シリーズを今一度系統的に学び直すことこそ,実となる生涯学習システムになることだろう。
 本書は,第一部疾病概念から始まり,第二部症候各論,第三部疾病各論と続くが,第二部症候各論は,各疾病の兆候を知ることであるが,今までにわれわれが系統的に学んだことはなかったに違いない。また,疾病各論には,各疾患ごとに症状,診療画像,治療の順序でそれぞれを解説し,画像が疾病理解の一過程にすぎないことを実感させてくれる。
 われわれ放射線技師が,医用画像という検査データにかかわるだけでなく,疾病の根本から理解したうえで各種検査法を駆使することになれば,まさに鬼に金棒である。
 本書を手がかりに,放射線技師がジェネラルな医療人に脱皮することを期待したい。
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