書 評

エッセンシャルX線解剖学図譜
多田信平:編著
A5変型判・本体3,800円・医療科学社

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[評者]川村 義彦
   (日本医科大学付属千葉北総病院
            中央画像検査室技師長)
 診療放射線技師は,臨床X線写真上で「ここはこのように出ていなければいけない」というX線解剖のポイントを知っていることがまず必要で,さらに主要疾患画像の読影ができなければ,現場では使いものにならないのが現実である。

 このような臨床現場の現状を踏まえて,ようやく重い腰をあげて診療放射線技師養成所指定規則が一部改正され,教育カリキュラムが大綱化され教育内容が変わった。そして,平成16年(55回)の国家試験より画像解剖学のなかに「主要疾患画像の読影」という項目が加えられた。

 EBMの日常診療への導入が進む現実を踏まえると遅きに失した感はあるが,今後臨床現場で働く診療放射線技師はもとより,教育機関,関連学術団体,技師会などの積極的な取り組みで,放射線医療の安全・信頼を確実なものとしていかなければならない。

 この放射線医用画像の読影にあたっては,やはりその基本にX線解剖学が重要な役割を果たすことになる。多田先生の『X線解剖学図譜』は,1979年の出版以来,今日まで放射線診療に携わる多くの方に利用されてきた出版物であり,まさにバイブルといった感がある。

 私も技師学校のX撮影技術学の講義にこの書を用いた一人だが,教育を担った者からすれば,このX線解剖学図譜は今日の放射線医療の確立に大きく寄与した一冊なのだと断言できる。

 このたび,原本『X線解剖学図譜』の基本を守って臨床に即した構成の『エッセンシャルX線解剖学図譜』として新たに刊行された。巻頭に英和・和英対訳のX線解剖学用語3900を収載しており,手のひらになじむ手ごろな幅で,しかもほどほどの厚さと重みで扱いやすいA5変型判の一冊にコンパクトにまとめられている。解剖用語を辞典として役立つように巻頭にもってきたのが大きな特徴で,しかも実際面を強調して臨床での利用に即した掲載順にポイントとなるシェーマがまとめられており,利用しやすい一冊に仕上げられている。

 実務と辞書活用を兼ねたまさに実践的携帯コンパクト版として,臨床現場で座右の書として備えたい一冊である。
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