書 評

エッセンシャルX線解剖学図譜
多田信平:編著
A5変型判・本体3,800円・医療科学社

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[評者]片山 仁
   (順天堂大学名誉教授)
 慈恵医科大学放射線科の前教授の畏友多田信平先生の編著による本書の原本は医療科学社から出版された『X線解剖学図譜』であるが,今回上梓された『エッセンシャルX線解剖学図譜』はさらに使いやすさを求めたものである。一口で言えば,贅肉を落とした,臨床に精通した人による,臨床のためのX線解剖図譜である。

 本書の執筆陣も多田門下の慈恵医科大学の放射線科医である。慈恵医科大学の放射線科は臨床放射線にしっかりした軸足をおいた放射線科で,臨床放射線の最先端を切りひらき,しっかりした裾野を拡げた教室である。したがって多田先生はじめ多士済々で,常に一流の臨床放射線を実践してきたわが国の臨床放射線の牽引車である。

 今回上梓された『エッセンシャルX線解剖学図譜』の特徴の一つはX線解剖用語を和・英用語,人名他・英語および英・和用語に分けて提示されていることである。さらにこれらを本書の頭にもってきているのが特徴である。従来これらの用語は索引的に最後の頁が与えられるのが普通であるが,本書では逆転の発想がしてある。これは本書を利用するものにとって大変便利である。整理された用語を通覧することによって,ポイントになる画像解剖が頭に入ってくるようになっている。本書は洗練されたハンディな図譜であり,画像診断医が日常診療で溢れるような画像を読影していく際に,あるいは診療放射線技師が撮影時の画像の評価選別に大変役立つ書であると思う。画像診断ではまず見たいところが描出されていなければならないし,画像解剖の正確な把握がエッセンシャルであるからである。今回は超音波画像とMRI画像の図譜は割愛してあるが,この領域でも造詣が深い多田信平先生および門下が近い将来,姉妹編として逸品を上梓されることであろう。

 今回はX線に絞ってまとめられているが,止めどもなく拡がる画像診断を当然意識してまとめられた本書の意義は大きい。疑いもなく研修医や放射線技師の諸君には必携の書である。
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