Med.Sci.Report

第11回胸部CT検診研究会大会
―CADのための画像特性という視点―
国立がんセンター東病院 放射線部 村松 禎久
 2004年2月13,14日の2日間,第11回胸部CT検診研究会大会(大会長 柿沼龍太郎・国立がんセンターがん予防検診研究センター)が,春一番の吹くなか,さわやか千葉県民プラザ(柏市)において開催された。本部事務局の報告によると270名を超える参加があり,研究会創設から11年,新たな1年目としてふさわしい大会という印象を受けた。
 特別企画として,シンポジウム「微小結節の診断の現状と展望」が開かれた。残念ながら,臨床業務の関係で直接聴講することができなかったが,最大の関心事であり,胸部CT検診のターゲットを決定する重要なポイントである。CT画像上,微小結節は3つのタイプに大きく分類される。すりガラス陰影型(GGO type),充実型(solid type)および混合型(mixed GGO type)である。GGO typeは経過観察から判断し,mixed GGO typeはほとんどが腺癌とされている。問題となるsolid typeについては,中川徹(日立健康管理センタ)から,自験例と前置きし「thin-slice上,5mm径前後はほとんど良性。日本全体の胸部CT検診データの集積が重要」という興味ある報告がされた。
 一般演題については,花井耕造(国立神奈川療養所)から報告された,「CADシステムのためのCT画像特性」という視点が新しい展開を予感させた。CADシステムは,CT装置側から提供された画像に対し常に最適な指摘能を持つ,つまりロバスト性の高いシステム構築が要求され,開発が行われている。一般的に,CADシステム側では提供されるCT画像が持つ特性の如何にかかわらず,前処理用画像フィルタなどで処理され,アルゴリズム本体(領域抽出,解析)で計算が行われる。花井らは,同一のraw dataから数種の画像再構成関数によって再構成を行い,得られた画像を徳島大学の胸部CT検診用CADで処理し,病変部の指摘能を比較した。画像再構成関数により指摘能が変化した結果から,CADに最適な画像特性を持つCT画像を提供することが重要と位置づけた。現実的に,日本では約7000台のヘリカルスキャンが可能なCT装置が存在し,スキャン条件やスライス位置などを考慮すれば,無限数の画像特性を持った画像が提供されている。
 CADシステムのためのCT画像特性という視点を考慮すると,自然と新しい研究テーマが浮かぶことになろう。

(医療科学通信2004年2号)
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