Med.Sci.Report

第1回日本放射線公衆安全学会
―放射線の公衆安全とは―
広島県立神石三和病院 放射線科 清堂 峰明
 標記学会が11月21日,大阪国際会議場において開催された。総会に引き続き諸澄学会長の講演が行われ,シンポジウムでは施設放射線安全測定研究会からの「医療用エックス線室漏洩線量測定の基準化」をテーマに各研究課題報告がなされた。
 今学会が第1回ということもあり,会長講演ではこの会が目標とする「放射線の公衆安全とは?」を標題として「施設放射線測定」と「被曝低減」をキーワードに放射線診療従事者個々人が専門知識の研鑚と放射線診療における公衆安全の視点が必要である旨が述べられた。具体的には,病院安全学という視点から病院危機管理の分析に始まり,放射線関連事故事例の教訓を生かしたマニュアル整備・職員研修などの施設要件を交えた医療安全管理体制の確立やわれわれ診療放射線技師に課せられた画像評価(画像診断)の重要性について法的根拠を示し,考え方の変革とその趣旨説明がなされた。これに基づき医療被曝低減に標準値を設定し,公衆安全の視点を重視し公衆の抱く不安に対し,測定を基本に科学的根拠を明らかにしつつ対処していく必要性が強調された。
 これまで医療放射線の分野では医療放射線防護連絡協議会や「放射線測定技術」「被曝低減」といった専門的なカテゴリーの研究会・分科会などが活動しているが,一般公衆を対象にした学会はなかった。保健物理学は「あらゆる放射線から人の健康を護ることを研究する学問」として原子力産業から医学,工学,農学,理学と多くの分野にまたがっている。「放射線公衆安全学会」の設立により,公衆安全という視点から多くの放射線利用分野が連携をとりあい「国民のための医療」「放射線に対する不安に応える義務」などについての研究がより推進されるであろう。また,変革期の保健物理に大きく貢献できることを期待させる内容であった。
(医療科学通信2004年1号)
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