Med.Sci.Report

日本放射線腫瘍学会第16回学術大会
―事故防止と対策―
横浜市大センター病院 放射線部 天内  廣
 標記学術大会は「調和ある発展―事故防止と質の向上―」を大会テーマに,2003年11月21〜23日,東京のTFTホールで開催された。
 シンポジウム2「事故防止と対策」は22日早朝からの開催にもかかわらず会場いっぱいの参加者で熱気に包まれた。冒頭に座長(広島大学・広川裕)が,国立弘前病院の過剰照射事故に関連した新聞報道(11月4日付,国立弘前病院過剰照射事故調査団・早渕尚文団長発表)とNHKのクローズアップ現代(11月20日放映,「放射線過剰照射―見過ごされた11年―」)をスライドにて紹介,「放射線治療の信頼を取り戻すために,今何をしなければならないかを議論してほしい」と述べた。
 5人のシンポジストは「安全な放射線治療実現と治療技師」「医療安全への組織的な取組み」「新設病院での安全対策」「多忙な日常診療の中に潜むリスクとその対策」「2つの『放射線治療装置安全ガイドライン』について」を発表し,安全な放射線治療実現には「治療装置のQC・QAや高精度な治療計画の実践はもちろん,放射線科医師,放射線技師,看護師らが自由に意見交換しあえる良好な人間関係と仕事関係を築くことが最も重要で,治療カンファランスには全員が参加して患者情報を共有することが大切である」「クリティカルな行為に対しては複数の職員によって確認し,確認したことを記録に残すことも重要である」ことなどが発言された。一方,マニュアルやガイドラインが学会などから示されても,施設によっては日常の繁忙から十分なQC・QAが行われていない現状や,治療患者数の増大,専任の放射線科医師や治療技師の不足,技師のローテーションの問題,IMRTなどの高度な放射線治療に対応できる専門技術職の専任化問題など,難題が山積している現状も指摘された。
 続発した過剰照射事故。その背景として放射線治療に携わる関係者のコミュニケーション不足,馴れ合い,過信,放任,責任所在の不明確さなどがあったのではないだろうか。今回の過剰照射事故が「対岸の火事」ではなく,「他山の石」として真摯に現状の安全管理体制を見直し,必要な改善措置はただちに着手する責任があると指摘する意見も出された。
(医療科学通信2004年1号)
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