Med.Sci.Report

第21回日本大腸検査学会総会
―注腸標準化その後―
伊藤クリニック 放射線科 森永 宗史
 2003年11月8〜9日,標記学会が滋賀県大津市,琵琶湖畔のピアザ淡海で開催された。
 放射線技師であり,6年前の注腸検査の標準化(案)と昨年の改訂標準化(『注腸X線検査の標準化―1cmの大腸癌を見逃さない』として医療科学社より単行本化)の策定に加わった筆者の,最大関心事であるパネルディスカッション「注腸標準化その後」は2日目の午後,最後の企画として行われ
た。参加者は50〜60名くらいと少なかったが,標準化に取り組むことの意義と検診システムのなかで診断する医師との連携が必要であることがよく理解される内容であった。
 2名の医師からは見逃し例の分析が報告され,右側結腸では収縮と残渣が,直腸・S状結腸では重なりが主な要因であるとの諸論文と同様の結果であった。しかし,提示された画像からは異常所見が十分指摘可能であり,読影見落としと言える例が多く,標準化をクリアしていれば,「1cmの大腸癌を見逃さない」画像は提供できていると思われた。このことは演者も指摘されたとおり,症例検討会に参加して画像診断の知識を身につけ,読影レポートを作成し,透視情報を含めた情報を医師側に提供する必要性を裏付けるもので,そのことで偽陰性例を大幅に減らし,優れた全大腸検査は内視鏡に迫る検査精度が獲得可能であると思われた。中小施設の2名の放射線技師は,画像評価を含む標準化の取り組みを実践して,画像評価が大幅に改善し,偽陰性例を半減することができたと報告した。
 日本消化管画像研究会・標準化班からは腰塚慎二(埼玉県立がんセンター)が自施設の10年間291例の大腸早期癌の分析を行った。偽陰性例9%の原因は上記と同様の傾向であったが,標準化をクリアしている場合の偽陰性率は3.5%,クリアしていない場合の偽陰性率は47.2%で,両者に顕著な差を認めたとした。また,標準化のメリットは精度管理が容易で改善対策が立てやすいことだとした。デメリットである画像評価に時間がかかるということについては,全例でなくても,年に1回,20例程度も画像評価をすれば自己の精度がわかり,改善につなげられるとした。
 全体としては,標準化の意義が十分あり,他学会への働きかけも含めて,ひとえに普及あるのみという結論で一致した。


(医療科学通信2004年1号)
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