Med.Sci.Report

第43回日本核医学会総会
―包括医療に向けた核医学診療の対応―
日本大学医学部附属板橋病院 中央放射線部 佐藤 幸光
 標記学会が2003年10月27〜29日の3日間,東京の京王プラザホテルにおいて,メインテーマを「Aiming for Higher Quality of Life―より良いQOLを目指して」に掲げ,シンポジウム,パネル討論,キーノート講演,報告講演,教育講演,ミニセミナー,ワーキンググループ報告,一般演題発表などの基幹プログラムのもとに盛大に開催された。
 パネル討論I「核医学診療における危機管理―あなたも参加しよう! 事故防止から医療の品質保証まで―」では,1.放射性医薬品の調製と品質管理,2.機器の精度管理と安全管理,3.個体状排泄性医療放射性廃棄物管理と必要性の3テーマで発表があり,各演題に対しては,Key-pad方式による聴衆参加型の形式で討論が進められた。会場から瞬時の回答が得られ,とても良い企画であった。なかでも放射性医薬品のキット標識に関する行為に関して,診療放射線技師の業務の範疇とするか否かの活発な論議がなされた。いまだ,はっきりとした結論に至っていない現状にあり,今後,関連学会などで検討を加え,業務の明確化を図ることが急務であることが指摘された。
 パネル討論IIは「包括医療の時代を迎えて―核医学診療の歩む道―」と題し,5名の演者より,1.包括医療導入で核医学診療はどう変わったか,2.特定機能病院における包括評価について,3.米国での包括化医療と核医学,4.癌のPET診断とバセドウ病における131I内用療法の医療経済上のメリット(包括医療の前後で),5.これからの核医学は? の5テーマで発表があった。
 包括医療に関するアンケート調査を全国の医療施設に行った結果によれば(82施設からの回答),核医学検査総数の大きな変動はなかったものの,入院から外来へのシフト,検査の予約移行という傾向が散見された。特に,心臓核医学検査数が減少傾向にあるとの報告であった。近年,包括医療に伴う核医学診療の置かれている状況は厳しいものがあるが,EBMに基づく核医学検査の臨床的意義を明確化し,これと相俟って,核医学診療における経済効果を継続的に強くアピールしていく必要性が述べられた。
 医療を取り巻く環境は,今後も大きく変化を遂げていくことが予想されるが,どのような時代においても,先見性,卓越性,技術革新といったような視点を持ちながら,この厳しい状況を乗り越えていくための施策を講じるとともに,知恵を創出し,コラボレーション(協働)を図っていくことの必要性を感じた。

↑このページの先頭へ