Med.Sci.Report

第41回日本癌治療学会総会
―局所進行型膵癌の治療法―
埼玉県立がんセンター 消化器内科 島村 智崇
 2003年10月22〜24日に札幌で第41回日本癌治療学会総会が開催された。
 癌治療とはいっても,消化器癌(胃癌・大腸癌・肝臓癌・胆道癌・膵癌など),肺癌,乳癌,婦人科癌(子宮癌・卵巣癌など),泌尿器科癌(腎癌,膀胱癌,前立腺癌),白血病などの血液疾患などと種々の癌疾患がある。今回はそのなかで消化器癌のうち,放射線治療と関係し,最近増加傾向にある膵癌に関して報告する。
 膵癌は喫煙と密接に関係しているとされ,現在日本人における癌による死亡率は男性で5位,女性で6位となっている。膵癌は遠隔転移を伴った状態で診断されるか,もしくは局所で腫瘍が増大し大血管に浸潤している状態で診断されることが多く,予後が非常に厳しい疾患である。遠隔転移を伴った膵癌は全身化学療法が第一選択となるが,遠隔転移を認めていなくても原発の膵の腫瘍や所属リンパ節がceliac arteryやSMAへ浸潤していれば手術適応がなくなる。このような明らかな遠隔転移がなく,局所で腫瘍や所属リンパ節転移が進展しているため手術困難な病状を局所進行型膵癌と呼んでいる。この局所進行型膵癌の治療成績が日本や北米において最も良いとされているのは放射線と化学療法(5-FU)の併用治療である。ただし,照射範囲や総線量などにまだ施設間格差があること,局所進行癌といってもその腫瘍の大きさで治療成績が異なること,局所進行癌において放射線・化学療法と膵癌の新規抗癌剤(ジェムザール)との比較試験がされていないことなど,まだ放射線・化学療法にも課題はたくさんあるように思われるのが現状である。ただし,膵癌の新規抗癌剤を用いた放射線・化学療法の試みなどの報告が数件されており,今後新しい標準治療になり,非常に厳しい膵癌の治療成績の向上になりうる可能性も示唆された。まだまだ,われわれが努力し治療成績の向上を図らなければならない疾患である。

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