「放射線測定機器動作チェックの日」制定
― 9月30日を忘れないために ―
吉田浩子 (東京都放射線管理士部会代表)







 1999年9月30日,わが国初の臨界事故が発生,日本国民が大変な衝撃を受けたことは記憶に新しいことと思う。この事故は2人の尊い命と引き換えに原子力災害等における行政の問題点(命令系統,連絡体制,技師間の連携,被災者への対応など)を浮き彫りにした。この教訓を生かし風化させないために,われわれ東京都放射線管理士部会では,臨界事故の発生した“9月30日”を「放射線測定機器動作チェックの日」と制定,今年は初の活動として,同日50人余の参加を得て,全国の災害時拠点病院である国立病院東京災害医療センター備蓄庫を会場に「放射線測定器の動作確認実習」と「放射線汚染患者測定と汚染除去実習」を実施した。
 実習開始にあたり同センターの友保洋三臨床研究部長より,「この事故を期に関連施設等に放射線測定機器が多数整備されたが,一度も使用したことがない機器や箱から出ていないものもある。放射線測定機器は日ごろの管理が十分でないといざというとき役に立たない。動作チェックを行う習慣を浸透させてほしい」との檄をいただいた。
 動作チェックの基本はバックグラウンドの測定であり,測定器自身の汚染チェックにもつながる。接触不良,スイッチの不具合,断線の確認などにはカウント数があるほうがより発見しやすい。われわれは簡単に動作チェックができるような線源が何かないものかと考え,自然界に存在しチェッキング用放射線源として利用できる塩化カリウムと湯の華(秋田県玉川温泉)を用いた。2種の物質の意外性が参加者には大変好評であり,今後私たちはこれらを使用した動作チェック法を確立したいと思っている。放射線汚染患者の測定では,同センターの診療放射線技師により,測定場所のセッティング方法から始まり測定者の服装さらに模擬患者による汚染測定講習が行われた。また,滅菌精製水による汚染除去法,さらにオレンジクリームを用いて参加者の手につけた「油性マジックインクのふき取り実習」を通して参加者には除去作業におけるその威力を体験してもらった。
 一般にはまだ知名度の低い放射線管理士だが,その目的は施設の放射線安全管理を統括する者,また緊急被ばくから国民の安全を確保するものと定義されている。認定者の誕生は偶然にも,臨界事故が発生した年の12月であった。今後は放射線災害や放射線安全管理について啓発する活動の一環として他団体・組織と協力の輪を広げながら,全国規模で継続的活動として事業展開していきたいと思っている。皆様のご協力とご支援をお願いしたい。
 
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