Med.Sci.Report

第62回日本癌学会総会
―臨床応用が待たれる種々の研究成果―
群馬大学医学部大学院 腫瘍放射線学 秋元 哲夫










 第62回日本癌学会総会は平成15年9月25〜27日の3日間,愛知県立がんセンター富永祐民会長のもと名古屋国際会議場で開催された。本総会の主題「がん研究:基礎から臨床へ」にそって,ゲノム研究から最近のがん治療で注目されている分子標的治療,およびその橋渡しをするトランスレーショナルリサーチの現況についてのシンポジウムが組まれ,活発な討議がなされていた。
 「ゲノム研究から癌の診断・治療へ」では肺がん,白血病,乳がんの疾患の特性がゲノムレベルで解明されつつあり,さらにその成果が臨床での治療へ応用されつつあることが報告された。いずれの疾患も放射線治療が重要な治療であり,その適応や効果予測もゲノム解析で可能になる日が近く,治療の個別化の足音が感じられるシンポジウムであった。
 放射線治療関連のセッションは,preclinical studyが主体であったが,臨床での放射線治療の効果をいかに高めるかを検討した研究が多く発表された。腫瘍の低酸素を利用した治療の開発や,臨床で放射線抵抗性腫瘍の代表格である甲状腺未分化癌をBCR-ABL活性阻害により強い放射線増感を示す結果など,臨床での問題点克服を目指した興味深い発表が多くあった。放射線治療は,機器の進歩はめざましく物理学的な線量集中技術が可能となってきているが,腫瘍そのものに起因する放射線抵抗性,難治性腫瘍は現実に大きな問題である。この観点からも,放射線治療を含めた癌治療に本総会で発表された優れた研究成果が臨床応用される日が近いことを実感できるすばらしい総会であった。


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