Med.Sci.Report

第17回「医療放射線の安全利用研究会」フォーラム
―IVRにおける皮膚線量推定は不可欠―
さいたま市立病院 中央放射線科 林  伸幸







 9月12日,標記フォーラムが「IVRの放射線防護:IVRに伴う放射線皮膚障害を防止するために」をテーマに東京の一ツ橋記念講堂にて開催され,医療と放射線にかかわる14の学会(団体)から多くの参加者を集めた。
 冒頭,大阪大学の中村仁信教授は,ICRP Publ. 85作成の経緯を紹介,施設や装置の違いにより被曝線量に10倍の差があると指摘し,線量低減の具体的な方策を示した。そして,後に演壇に立った松山赤十字病院・水谷宏氏も「IVRの患者の受ける線量測定マニュアル(案)」の報告のなかで同様の内容を示しており,線量測定の重要性とともに,線量測定方法の確立と普及が急務であることを再認識させられた。
 また,自治医科大学の菊地透氏は「IVR患者の放射線防護ガイドライン(案)」を示し,インフォームド・コンセントの重要性や,3Gyを超えたときの記録の必要性などを述べたが,ここでも線量推定の方策が課題としてあげられた。線量推定を第一歩として,放射線皮膚障害の予防と管理を,組織で取り組むことが重要であると強調している。
 なおフロアから,ICRP Publ. 85の翻訳『IVRにおける放射線傷害の回避』の「傷害」という言葉について質問がなされた。われわれが従来「放射線障害」と記していたものが,同訳書では「放射線傷害」と表記されている。このことはICRP勧告翻訳検討委員会でも議論され,「injury」の意味を尊重するかたちで決まったということであったが,違和感を訴える人は少なくないように思えた。
 総合討論では,ガイドライン(案)に対する要望が多数出された。なかでも,心臓領域に偏りすぎているという意見は理解できるところである。多方面で放射線防護に携わる方々が一堂に会し,患者中心の議論に終始した有意義なフォーラムであったが,質問を受ける時間が短く,参加者の意見が出にくい印象を持った。


↑このページの先頭へ