Med.Sci.Report

第20回日本ハイパーサーミア学会
―癌患者からの高い期待―
産業医科大学 放射線科 今田  肇
 標記学会が,平成15年9月5日,6日の2日間九州大学医学部百年講堂で開催された。併せて福岡市,北九州市において市民公開講座も開催された。
 学会においては,約90の基礎・臨床演題が発表され,シンポジウム,ワークショップでは,これまでのハイパーサーミアの歩みとエビデンス,これからの課題・可能性について集中的に活発な討論が交わされた。主なものでは,産業医大からは,過去17年間の620例の総括的報告があり,放射線との併用における,ハイパーサーミアの臨床的有効性が報告された。さらに,京都大,京都府立大からは,肝癌,肝転移に対する集学的治療におけるハイパーサーミアの有効性,群馬大学からは,直腸癌術前照射におけるハイパーサーミアの役割,九州大学からは,食道癌術前照射におけるハイパーサーミアの有効性がそれぞれ報告された。いずれも高いレベルの臨床報告であり,臨床の場におけるハイパーサーミア治療成績を実証するものであった。ただし,過去の治療成績の報告が多く,新しい知見の報告が少ない点が気になった。
 また,2日間の市民公開講座では600人近い参加があり,癌治療に対する関心の高まりが感じられた。2時間の講演・討論を通じて,参加者にはハイパーサーミアが,放射線治療,化学療法と併用することで癌治療に大きく貢献できる治療であることを理解いただけたと考えている。しかし,現実の臨床の場では,ハイパーサーミアを行っている施設自体が少なく,行っている施設でも多くの症例をこなせないという問題を抱えている。また,医療関係者におけるハイパーサーミアの有効性に対する認識も不足している。癌患者のハイパーサーミアに対する高い期待に応えていくためにも,これらの諸問題を早期に解決する必要があるが,私たちハイパーサーミア治療を行っている施設は,しばらくは孤軍奮闘する必要があるようだ。


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