Med.Sci.Report

第14回アジア放射線技師会議(ACRT)
―タイ初の国際会議を概観して―
駒澤大学 医療健康科学部 西尾 誠示
 8月19日〜22日,標記会議がタイ・バンコクで開催された。タイで開催される初の放射線技師の国際会議で,日本からの50数名を筆頭にアジア諸国を中心として約400名の参加登録があった。19日,開会式に先立って開催された日本放射線技師会(JART)主催ワークショップ「医療被ばく低減と放射線技師の役割」は,座長の中村豊・JART常務理事はじめ5名の日本人演者が被ばく低減に対する日本の取り組みをアジアに紹介し,フロアから意見を求める形式で行われた。アジアをリードしようとするこのJARTの姿勢は評価される。
 20日,午前中の講演ではVallinger・オハイオ大学助教授が「Radiology Past: What Lies Ahead」と題して,X線発見以来100年の歩みと21世紀の動向を多岐にわたって展開した。続いて,Sala・タイ技師会会長は「Role and Potential of Radiological Technologist in Thailand」と題して,タイ放射線技師会の歴史と教育制度・カリキュラム,さらに技師の臨床面の役割に止まらず研究領域から大学院構想まで言及した。世界でもいち早く四年制大学教育を取り入れたタイ放射線技師会の意識の高さがうかがえた。午後はパネルディスカッション「Role and Potential of RT in Member Countries」が行われ,各国の代表が自国の取り組みと今後の役割を述べるとともに教育システムについて紹介した。世界の技師も高学歴化へと進んでおり,教育の必要性を感じているのは日本だけではない。このACRT会議に博士号を取得している技師が何人も参加していることがそれを証明している。
 例年のACRTの一般演題発表では,実験データに基づいた研究発表はまれで,検査手順,患者接遇,管理,教育などが多い。今回はMDCTに関する演題が多数あり,発表内容には国・地域の特徴が感じられた。特にシンガポール総合病院における造影技術に関する演題については20分も活発な質疑が続いた。やはり検査手法や研修システムなどが関心を呼ぶようだ。まれな例としては香港のSARS患者の対応について緊急報告があった。
 次回第15回ACRTは2005年日本で開催される。

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