Med.Sci.Report

日本超音波医学会第76回学術集会
―新たな可能性を秘めた
   新世代造影剤の登場に期待―
東京慈恵会医科大学附属青戸病院 放射線部 熊谷 史範
 標記学術集会が,5月9〜11日,札幌市の北海道厚生年金会館,ホテルロイトン札幌の両会場にて開催された。
 今回の学術集会のテーマは,「超音波医学の未来のために」である。これは,工学研究者には,日ごろ臨床の現場で必要とされる医用超音波工学的技術とその問題点への理解を求め,臨床の現場に立つ医師・技師には医用超音波工学の先端的な技術の認識と臨床応用への知識を求め,相互理解を図るとともに問題点を共有することで,超音波医学の発展とその未来を切り開いていこうとの趣旨で設定されたテーマである。このテーマのもと,シンポジウムと講演は,超音波工学的知識と超音波医学的知識の融合による最先端の技術と臨床応用の知識を得る場として,また超音波医学の未来についての意識を深めることに重点をおいて進められた。
 そのなかで超音波工学側から,現行の造影剤と新世代の造影剤の比較や可能性について,超音波造影剤の気泡のふるまいについての解説が行われていた。気泡は,超音波の音圧・波形によって異なるふるまいを示す。一般的に低音圧では圧力変化に従って膨張・収縮を繰り返し,音圧の上昇とともに緩慢な膨張と急速な収縮を起こす,さらに音圧が上昇すると気泡が破壊される。この動態特性を利用し造影効果を得ているが,現行の造影剤では,気泡振動の音圧範囲が狭く,低音圧下では造影効果を得にくいとされている。しかし,新世代の造影剤では,より低音圧下であっても気泡の膨張・収縮を繰り返し起こす,適切な高調波帯域に制限することによりS/Nの改善も可能であることが示唆されていた。
 今現在,私たちの施設でも造影検査を行っているが,造影検査を始めたころは,検査よりも超音波装置のセッティングに大変苦労したのを覚えている。新たな可能性を秘めた新世代の造影剤が登場することにより,超音波装置のセッティングに苦労することなく適切な造影効果,S/Nが高い画像が得られ精度の高い検査が可能であると感じた。
 今回の学術集会では,数ミクロンの世界で起きている気泡のふるまいから,現行の造影剤とその未来像について知ることができ大変有意義なものとなった。また,超音波検査手技,造影検査手技の向上が今後の課題であることを再認識するとともに,医用超音波工学的技術のさらなる発展を期待してやまない。

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