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第42回日本消化器集団検診学会総会
―科学的視点に立った癌検診の
            課題と将来展望―
(財)大阪がん予防検診センター 放射線科 久保 次男
 5月15〜17日,石川県の金沢文化ホールにおいて標記学会が開催された。特に今回,上部消化器集団検診(以下胃集検と略す)は,癌検診を科学的に検証し,診断精度の向上を目指すことを標榜するなど大きな変革を予感させる総会であった。
 今回注目すべき点は,新撮影法の次に変革の大きなテーマとなるであろう「胃集検における放射線技師(以下技師と略す)の読影診断の必要性」が取り上げられたことである。特別講演では,丸山雅一が「胃集検のX線診断は医師とともに技師も行うべきであり,そのためには技師が主体となり一致団結し,国の制度を変えていかなければ,やがてバリウム検査は滅びるであろう」と,今後の胃集検が発展するための必要条件を訴えた。また,シンポジウムにおいても,技師の読影に関する報告と討論が行われた。その手法に関しては,@所見レポートを付記したもの,A単にコメントを付しただけのもの,B追加撮影をコメントとしたものなど,具体的な提案があった。技師の読影については,施設・個人間の認識のズレが多少見られたものの,最初の討論としては,その意義が一応評価できる。今後,技師が本気で読影診断の扉を開けるには,従事する技師の意識レベルを高く持ち,日々技量の研鑚に励むことが肝要であろう。いずれにしても,技師の読影というテーマは,胃集検に従事する技師が夢にまで見たものであり,長年待ち望んだ瞬間であった。ただし,今回報告された読影の精度面に限って言えば,読影診断を言うには程遠い成績であったと言わざるを得ない。
 胃集検の読影能力と撮影技術は車の両輪の関係である。撮影は99%の割合で放射線技師が行っている点や,読影医の減少などの現状を踏まえると,技師の読影診断は今後の胃集検に必要不可欠であろう。しかし,現状では医師法,医師の意識,技師間の読影能力の差など,多くの問題がある。このことから,医師,技師間の調整はもちろんのこと,技師が主体となってこれらの問題解決に全力で取り組まなければならない。
 今回の総会は,「胃集検における技師の読影診断」という方向性と必要性が確認できたという点については,非常に重要な意味を持った大会となったと言えよう。そして,胃集検の変革への波は,もうすでに始まっているのではなかろうか。

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