司会:
東洋医療学校・太田宗夫(左),関東中央病院・前川和彦(右)
パネリスト:
右から,杏林大学医学部救急医学/日本救急医学会・島崎修次,筑波メディカルセンター病院・大橋教良,静岡県・土居弘幸,日本医科大学付属病院高度救命救急センター・二宮宣文,兵庫医科大学救急・災害医学・丸川征四郎
|
災害医学が医学会総会に取り上げられるのは2,3回目になるが,本格的なセッションとしては今回が初めてではないかと言う。まず島崎は,医療関係者の集団災害に対する知識・スキルがばらばらであることが問題であるとして,日本救急医学会としてその標準化を考えているとした。次いで大橋は,集団災害は発生頻度が低いため経験不足となるので訓練が必要だが,方法論・教育論が不足していると,また土居は東海地震を想定した静岡県における広域患者搬送システムを解説するなかで,トリアージ訓練が行われているもののそのトリアージを誰が行うのか方法論が確立していないと問題を指摘。さらに,二宮は災害拠点病院がいまだ災害医療救援のシステムを構築できていないとして,災害拠点病院との連携を密にして訓練を行う必要性を強調,卒前教育として救急・災害医学教育の時間が少ないこと,卒後教育としては再教育制度がないことや義務化されていないことなどが問題であるとした。討論のなかではこうした問題の解決に向けて,指導医制度,同様の訓練の地道な繰り返し,公衆衛生の領域における救急フェイズの教育実施,災害対応を医療人の責務として明確化するなどが言及された。特に最後の提言に関しては,医学会総会のような場で医師のマジョリティをもって,医師法に責務として明記する宣言することによって行政を動かすようにすべきだとの意見が出された。そうすることによって,いろいろな会でなされる同様の議論が,次のステップに進んでいくのではないだろうか。
|