書 評

[診療画像検査法]歯・顎顔面検査法
金森勇雄・他:編著
A4判・本体5,000円・医療科学社

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[評者]西連寺 永康(松本歯科大学学長)

 大学病院や総合病院におけるほとんどの歯科放射線臨床は,歯科医師と診療放射線技師の共同作業によって行われている。診療放射線技師は歯科医師からの指示を受けて,X線検査やその他の画像診断装置による検査を実施し,有用な検査情報を提供して高度な診療を効率よく遂行する力となっているのである。例えば,X線撮影の依頼を受けた場合,診療放射線技師たちは常に,歯科医師が求めている情報がどのようなものであるかを検討察知して,最も適切な画像情報が得られるであろう検査方法・手技を選択して,歯科医師の要求に応えている。したがって,経験を積んだ診療放射線技師の歯科放射線診療に対する知識・力量は端倪すべからざるものがある。
 先日,大判の分厚い書籍が送られてきた。手にとってみると,『歯・顎顔面検査法』とあり,著者たちは各歯科大学病院の放射線診療の実際に携わっている診療放射線技師の諸君であった。しかも,聞くところによると,本書の出版を企画してから2年以上もの期間をかけ,互いに協力して構成を練り上げ,内容を吟味したうえで執筆に入り完成させたものであるという。私は非常な興奮を持って本書を開いたのであった。そして,一読するに,その内容が,細かな点は別として,まさに私の期待を十分に満たしてくれるものであることを知った。私は,遂にこのような本が世に出たのだという,強い満足感と感慨を覚えたのである。
 本書は,6つの部で構成されており,第1部から第4部にかけては,最近の歯科放射線科で行われている種々の画像検査法を網羅し,その原理の解説から,臨床に適用する際の注意点に至るまでを,専門職としての視点を通して実際的な問題に即して述べている。また,第5部では多くの病態についての代表的な症例を選んで,日常的な撮影手技から最新の診断機器によるものまでを含む,鮮鋭な画像を使用した方法とその撮像ポイントをあげて説明している。このような編集内容によって,本書は,より精緻な歯科臨床を志向し,大学病院などからのより高度な画像情報を求める機会が多くなった一般臨床歯科医が,正確な画像解析を行う際の恰好なリファレンスブックとしての位置を占めたと考える。
 診療放射線技師は,多くの場合,職場における放射線管理・防護の実務に従事している。第6部では,その経験に基づいた医療放射線被ばく管理の知識をQ&A形式で,簡潔にかつ要領よくまとめてある。
 これらの点から,本書を歯科放射線診療の実務に関心を持つ人々,さらに,その知識の深化を望む人々が座右の書として活用されることを期待するものである。
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