書 評

注腸X線検査の標準化
1cmの大腸癌を見逃さない
日本放射線技師会消化管画像研究会:監
B5判・本体3,000円・医療科学社

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[評者]今村 哲理(札幌厚生病院胃腸科)

 老人保健法による大腸癌検診が開始されて10年以上が過ぎた。精検として全大腸内視鏡検査が推奨されているが,各施設の精検処理能力にもよるが,精検をどこまで全大腸内視鏡検査でカバーしきれているか? おそらくカバーしきれないであろうという予見と,癌発見において注腸X線検査は全大腸内視鏡検査に比肩できるのか? できるとするとどの程度の病変発見感度が必要か? そこに放射線技師の存在理由があるという発想から,本書の序章とも言うべき『注腸X線検査標準化(案)』が世に問われた。
 以来5年,幾多の検討議論を重ね,一応の結論とも言うべき本書『注腸X線検査の標準化―1cmの大腸癌を見逃さない―』がこのたび刊行された。サブタイトル“1cmの大腸癌を見逃さない”にあるように,1cmの大きさの病変の発見感度があれば,全大腸内視鏡検査に救命可能癌の発見においては,注腸X線検査は意義があるという主張から始まり,いかにして1cmの大きさの病変を見逃さない良質の画像を撮影するかという基本的かつ重要な5章の「画像の評価基準」(著者は結果の標準化と称している)を骨子としつつ,その標準化を達成するための要素―前処置,受検者に対する接遇,安全な検査を行うために―を説き,最後に標準化したことによる(標準化したからこそできるのだが)データの解析を各施設にフィードバックし,レベルの維持・向上を図り大腸癌検診に寄与したいとする並々ならぬ意欲を感じた。
 本書の最も重要な章である「結果の標準化」は単に検診のためばかりでなく,一般論としての注腸X線検査の書物としてもより平易に解説され十分な内容を持っている。補記の病変のスケッチもわかりやすく楽しい。
 推薦文の丸山氏の消化管X線検査の現状を憂いての叱咤・檄は,消化管X線に携わる放射線技師諸氏への期待の裏返しとも言え,今後の奮闘を切に期待したい。本書が放射線技師のみならず研修医の検査室での座右で活用されることも併せて祈念しつつ,次版では「標準化の運用」の章のその後もぜひ知りたいところである。
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