評価基準を標榜する時代
社団法人日本放射線技師会会長 熊谷 和正

九州地域放射線技師学術大会で講演中の熊谷和正会長

 1951年6月に診療放射線技師法が施行されて今年は52年目になる。医師法と保健師・助産師・看護師法は,放射線技師法に先立つこと3年の1948年7月に医療職種としての資格法が施行されているから,両資格法は今年で55年目になる。この50数年間にわが国の医療福祉事情は大きな変貌を続けてきた。この先はさらに変化の速度が増すだろうことを疑うものはいない。
 そのような変遷のなかで,1958年の検査技師資格誕生以後も多くの新たなコ・メディカル職種が誕生してきたし,この先の新職種誕生の兆しも見え隠れしている。と同時に,既存の各職種にあっては,実質的な業務内容が大きく変化している状況である。当然の成り行きと言ってしまえばそれまでであるが,厳格に規制された資格法を現況に柔軟に即応させるべく大胆に改正することは困難らしく,行政側の苦し紛れとも見える法解釈などでしのいでいるのが手にとるように伝わってくる。
 一方,医療界をリードする位置にある職能組織では,自らの職種にいかに付加価値をつけて変化に対応していくかという視点で資格取得後の研鑽システムを構築してきている。
 日本放射線技師会では,医療事情の変遷に対応する方法として,多くのセミナーを企画実施してきた。ときには,全国の全会員を対象にした一斉講習を実施したこともあり,資格取得後の継続的リフレッシュ教育に関しては,質・量そして時期ともに決して他職種に遅れをとるものではなかったと自負している。しかるに,医療提供側であるわれわれ医療専門職種の真髄は,自己研鑽の結果がどれだけ患者の実質的な利益に直結しているかであり,具体的には各職種の業務域における技術レベルの高さであると言えるだろう。そしてさらに,現今の社会状況を鑑みたとき,それらのレベルは,なんらかのかたちで第三者にもわかりやすく標榜されるべきである。医療以外の世界では,すでにその形態が構築されつつある。
 このような時代背景のもと,本会では放射線技師の各種認定や検定制度をシステムとして構築すべく検討中であり,平成15年度早々にも実施したいと考えている。
 一部を除いて正式な決定は見ていないが,ここにその構想の概略を紹介したい。
1)認定制度
 本会では現在「放射線関連機器管理責任者」「放射線管理士」の認定を行っている。これらは,本来放射線技師の法的業務範囲外と考えられている分野について,業務基準を定め,それに対応できうる能力を付与するための講習を実施し,認定試験合格者を本会が認定しているものである。これら2つの認定資格のほかに「医用画像管理士」の認定を始めるべく現在検討中である。これらの認定資格は,法的な放射線技師業務の枠外にあるため,基本的には非放射線技師にも取得の道を開いている。
2)検定制度
 われわれ放射線技師のみならず医療提供職種にとって,医療需要サイドに現状で最良の技術を提供することは,最も重要な職業義務であることは言うまでもない。しからば医療提供側の技術レベルの標榜が,医療を受ける側に対して明確なかたちでなされることも今後は必要であろう。したがって,本会の実施する検定試験により,放射線技師の本来業務についてのスキルレベルを明らかにしようとするのが,この検定制度である。
3)専門技師制度
 現時点では,今後の課題とする。
 以上の1)から3)の認定,検定,専門技師の各制度については,それらにトライするには,そのための基本資格が別に定められなければならないと考えている。具体的には認定資格試験あるいは検定試験にトライするためには「アドバンスド放射線技師」の資格を持つ者でなければならないこととする。また,将来構想である専門放射線技師試験にトライできるのは「マスター放射線技師」資格者のみとする。アドバンスド放射線技師やマスター放射線技師などを放射線技師格と呼ぶことを考えている。同じ放射線技師でも“格”の違いを強調するのが目的である。放射線技師格にはアドバンスドとマスターの間にもうひとつ「シニア放射線技師」格が入る。技師格取得要件は,「医療安全学」そして放射線技師には不足していると言われて久しい「看護学」など,指定の単位を習得した者に「アドバンスド放射線技師」格が与えられる。必修科目の単位は大学で取得した単位も有効である。そして「シニア放射線技師」格は学士クラス。「マスター放射線技師」格は修士・博士クラスである。ただし,学位のない者にも,著書や論文などの実績により上位技師格の取得の道が開かれている。
 本システムは,形のみならず内容が伴った,社会から正当な評価を受け得られるものとして構築していきたいと考えており,早々に実現し,社会の批判を仰ぐ所存である。
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