第2回 医療科学セミナー
2007年 第5次医療法改正と
良質な医療提供のための
法改正について
前田和彦(九州保健福祉大学薬学部医事法学研究室教授)
東京・講道館(2007年7月8日)
2007年度日本社会医療学会東京部会
日本柔道整復接骨医学会社会医療分科会合同研究会共催
 「第5次医療法改正」ということで,2007年1月と4月に法改正がありました.ご存知のように医療法は医療の中の憲法みたいなものですので,医療法が変われば周辺の法規もさまざま変わることになります.本日は,そのすべてをお話するには時間もありませんので,第5次医療法改正の概要を中心に,医師法の改正,感染症法の改正についての3点をお話していきます.



第5次医療法改正の概要
・医療法の目的
・医療法改正
・医療法改正の内容
・良質な医療の提供
・医療の連携
・医療における情報の支援 1
・医療における情報の支援 2
・医業等の広告制限
・助産所の広告制限と嘱託医師
・専門性の広告について(厚労大臣に届けた団体の場合) 1
・専門性の広告について(厚労大臣に届けた団体の場合) 2
・医療の適切な選択に資すると広告できるもの 1
・医療の適切な選択に資すると広告できるもの 2
・その他広告できるもの
・医療の安全確保
・医療機関の開設


「医師法」の改正
・免許に関する処分および再免許 1
・免許に関する処分および再免許 2
・再教育研修 1
・再教育研修 2
・医師の氏名等の公表 1
・医師の氏名等の公表 2


「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改定
・感染症法の改定
・感染症の分類 1 一類感染症
・感染症の分類 2 二類感染症
・感染症の分類 3 三類感染症
・感染症の分類 4 四類感染症
・感染症の分類 5 五類感染症
・結核の取扱いについて


資料


第5次医療法改正の概要

医療法の目的
医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項,病院,診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により,医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り,もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする.

 「医療法の目的」で青文字になっているのが今回の法改正で新しくなったところ,もしくは中心的なものとなります.まず「医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項」ということで,要するに患者さんが医療を選択することを国として支援するという,これまでの医療法の中に現れなかった文言が挙げられます.つまり,昔は逆に選ばせないということで,広告制限が非常にきつかったということです.
 しかし現在,広告制限は変わりました.その理由というのは,国側が適切な医療を提供するために,患者さんの選択を支援するというかたちに変わるのだと,医療法自体に現したということになります.ですからそれに対して,病院や医療機関の管理に対する内容,「医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進」することを,医療法で定めることになります.
 もうひとつ,「医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り」で,まずキーワードになるのが「良質かつ適切な医療」という言い方です.つまり「良質」,質を上げるということを医療の目的に掲げました.これには治療そのものの問題のみならず医療従事者の資質という問題まで含まれます.これは,平成9年にインフォームド・コンセントを医療法の中に含めた医療法第1条の4の第2項,ここに始まった患者本位の,患者中心の医療というものに,結局は医療従事者の質が上がることが必要だという考え方が,医療法に今回入ってきたということが言えます.


医療法改正
2006年6月21日に公布された「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」により,医療法は国民の医療に対する安心・信頼を確保し,質の高い医療サービスが適切に受けられる体制構築のため,2007年4月の施行を中心に,同1月(有床診療所に関する規制見直し),2008年4月(薬剤師,看護師等の再教育制度の創設等)に順次改正されることとなった.

 そして昨年6月に交付されたのが,「医療法改正」で「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」です.要するに良質な医療の提供とその体制の確立というのが,今回の第5次医療法の中核ということで,そのための法改正であったわけです.それによって「医療法は国民の医療に対する安心・信頼を確保し,質の高い医療サービスが適切に受けられる体制構築のため」にということで,本年4月の施行を中心に,同4月,つまり今年の4月にまず先駆けとして「有床診療所に関する規制見直し」があり,そしてこの4月にほぼ全般の改正を行い,来年2008年の4月には薬剤師,看護師等の再教育制度の創設等というように,順次改正が進めてられておりますが,この4月が一番大きな改正であったわけです.


医療法改正の内容
医療に関する広告制限の見直し,医療計画制度の見直し,在宅医療の推進(薬剤師法も改正),地域や診療科による医師偏在問題の是正,医療安全対策のさらなる推進,医療法人制度改革等,広範囲にわたり,また,医療従事者の資質向上については医師法,歯科医師法,保健師助産師看護師法,薬剤師法の改正も含まれている.

 「医療法改正の内容」ですが,まず「医療に関する広告制限の見直し」で,この後,少し詳しくお話させていただきます.従来は,国民が誤解をしないようになるべく制限された内容を知らせて,それ以外のことを勝手に宣伝しないように,広告しないようにということが主旨だったのですが,今は逆に,医療を知らせ,その内容を知ってもらうことによって,医療の選択権をいかに維持するのかということが,この医療法の政策,または厚生労働省を中心とした国側の施策というようになってまいります.
 次に大きな問題は「地域や診療科による医師偏在問題の是正」で,全国的に産科,小児科,麻酔科,そういったものを中心に医師が非常に少ないということがあります.この医師の偏在というのは,場所の偏在と,診療科の偏在との2つが考えられます.つまりドクターがいなくて,MRIやCTに関してまでナースが自分で扱ってしまうという地域,それと診療放射線技師がCT,MRIを単独で扱っているのは地方で現在多く見られる姿です.そして,レントゲンを撮るのが診療放射線技師ではなくて看護師というのもありまして,それが歯科の診療所になりますと半数以上は歯科医師ではなく歯科衛生士が撮っているようです.
 ただ,こういったマンパワーの不足という問題を医療法によって人数の是正ができるかというと,これはなかなか難しいところがありまして,いまは政策としてこれに取り組んでいくということであって,具体的に何人どうするかという話は出ておりません.唯一あるのが医学部の定員増で,医学部の流れというのはどんどん縮小傾向にありますが,それが今回,10県という枠で地域にいくつか絞って医学部の増員をしています.それを全国でやりますと東京に集中したりしますが,そうではなくて,その地域で開業または診療を行うという条件で地元から取る,地元に職として残すということで,医師の偏在を少しでも是正しようという動きがあります.
 あと問題は診療科の偏在です.小児科や産科というのはリスクが非常に高い割にそれに見合うだけの収入があるかというと,確かに小児科に関しては,整形外科が下がった分だけ小児科が上がったのではないかという程度には確かに上がりましたが,非常にリスクが高く,内科・小児科と書いてあっても,括弧で「乳幼児は扱えません」というようなところもあります.それなら出すなと言いたくなりますが,それぐらいやはり難しい問題があります.
 というのは,たとえば公衆衛生があったとしても寄生虫学がなくなっている医学部がほとんどです.寄生虫に関しては医学部自体がもうあまり教えていません.ですから多くの医学部ではそういったもので疾病が起こった場合,診察できない,それがわからないわけです,それで誤診をしてしまったりすることが起こってくるのですが,こういったように医学部の中でも一定の診療科であまり人数がいなかったり,もう跡継ぎがいないという診療科もあります.外科も本当であれば一番多く来そうですが,整形外科も含めてだんだん減少が見られています.これも医療過誤とリスクの問題があるからです.今は内科のほうが整形内科といって内科的な外科手術というようなかたちで扱っていて,大きな外科手術は一定の大病院に集中してしまい,町中(まちなか)の外科というのが怪我で薬を塗って包帯を巻く程度であったら,もしかしたらもう柔道整復師で足りるのではないかと,そういった部分があります.そうであったら標榜できる診療科も含めて,これは少し考え直すべきところにきているというのが,本来の医療法の改正時にあったそうです.そこまでは表に出てきませんので,とりあえずは地域や診療科による医師の偏在も「是正」という言葉で集約して,この医療法改正に出てきたということになります.
 次のポイントは「医療安全対策のさらなる推進」で,これは1980年代以降,つまりインフォームド・コンセントが出てくるちょっと前から,今もマスコミを賑わしているように医療過誤の数は増えています.昔は「お医者様にやってもらったのだから訴えるなんて」ということで,表に出なかったわけです.つまり80年代から90年以降,医療過誤が表に多く出てきたときに,今の医者は適当なことばかりやっているという話が出たのですが,実はそうとばかりは言えません.昔のドクターもミスはミスで犯しているのですが,表に出なかっただけです.それプラス今の医療過誤というのは,明らかに技術的な未熟ということと,患者に対する意識の不足です.そのあたりのあいまいな注意力によって医療過誤がまた起こってきてしまっています.そこが結局,その次の「医療従事者の資質向上」ということを,医師法を中心に行われていくということで,罰則を増やすというよりも,再教育等,言ってみれば鞭を与えるようなかたちの法改正になっています.
 その間の「医療法人制度改革」云々とありますが,これは今回あまり深く出しておりません.医療法人は以前3人以上の常勤の医師がいる場合法人格が取れるということから法改正を重ねて,現在では1人医療法人制,1人からでも医療法人が取れるということで,個人開業医を守るという考え方からこれになりました.ただそれだけ言ってしまいますと医者ばかり優遇しているという話になるのですが,これはもう少し耳障りが良い言葉で言えば,地域医療を守るという名分が入るわけです.
 地域医療として確立できるのであれば,個人開業医を潰せないのと同じように接骨院等も潰せなくなるはずです.つまりそのようになれるかどうかというのが,これからの接骨院や鍼灸院の課題になっていくのかもしれません.


良質な医療の提供
医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手は,本法の医療提供の理念に基づき,医療を受ける者に対し,良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない.そして医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないという,いわゆるインフォームド・コンセントの理念を理解し,実行することが強く求められている.

 さて,この中心課題となっている「良質な医療の提供」ということですが,これは最初に出てくるように,「医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手」,つまりすべての医療従事者は「医療提供の理念に基づき,医療を受ける者に対し,良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない」.そしてこれに対して大事なことは,その次の「適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」という,これは要するにインフォームド・コンセントのことです.医療法にはインフォームド・コンセントという文言は出てこないのですが,先ほども申し上げた医療法第1条の4の第2項に,この「説明をして,理解を求めるように努めなければならない」という,いわゆるインフォームド・コンセント条項が入ってきます.言葉としては使っていませんが,これはいわゆるインフォームド・コンセントであり,その理念を実行することが強く求められています.したがって,もし必要な説明をしなかった,手続きをあいまいにしていたということがあれば,これからはかなり厳しく見られていくということが,この医療法の流れで来ています.


医療の連携
医療提供施設において診療に従事する医師及び歯科医師は,医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連係に資するため,紹介,診療又は調剤に関する情報の提供,及びその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない.
病院又は診療所の管理者は,保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者と連携を図り,退院する等の患者が適切な環境の下で療養を継続できるよう配慮しなければならない.

 「医療の連携」ですが,この連携というのは今までは医師,歯科医師,看護師といったものだけだったのですが,それに今度は「保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者と連携」という文言が出てきます.これは医療提供施設の治療が終わったとしても多くの患者さんは高齢者であって,そのまま福祉サービスや介護サービスとの連携を必要とします.ということはまず第1点として,そういった高齢者の間を受け持てるように,つまり病院から今度は介護施設,福祉施設というところと連携が取れるような知識や具体的な連携を取っていってほしいということが条文の中に入ってきました.
 また,「診療又は調剤に関する情報の提供」もするということで,こういったことは今までは実は秘密に近いものでした.つまり処方せんは医師と薬剤師の間を行き来しているだけであって,それを他の施設もしくは介護等と情報を共有することは,必要はあったにせよ法令としては考えてこなかったわけです.ただし,どんな薬を飲んでいるのかという既往症の問題というのは,今までは個人情報云々ということで,特にここ2年ぐらい個人情報保護法ができてから,皆さんちょっと神経質になっています.
 実はこのたび,個人情報保護に関する委員会がまた発足したのですが,その内容は過度な制約を解くためにはどうすればいいのかという委員会です.そもそも個人情報保護法は何を対象としているかというと,全国津々浦々のすべての問題に対して,「喋るな」とか「出すな」という言い方をしているわけではなくて, 5000人以上の対象となる個人情報を検索できるかたちで所有している事業者に対して,それを「勝手に出すな」と言っただけです.たとえば学校教育の中で試験の点数を張り出してはいけないとか,患者さんが同意しているのに医療従事者間でその薬の名前や既往症を教えられない,つまり連携を取ってはいけないとか,こういう病気の容疑者がいるからと警察官が病院に行っても個人情報だから教えられないとか,そういうことを言っているのではありません.そういう問題ではなかったのですが,どうもそうなってしまっている.これは最初のときの事の重要性というものと,本来の解釈というものとがあまりにも食い違ってしまったということで,個人情報保護法につきましては,今,本来はこういうことなのだということをもう1回外に出し直す審議を始めています.
 今お話したように5000人以上云々ということは,まず普通の医療機関,福祉機関では関係ないわけです.ただし無関係かといったら,ガイドラインを厚生労働省が出しました.それは医療,福祉の施設に対してその個人情報保護法を,あくまでもガイドラインなので努力規定ですが,これを遵守するという言い方をしています.
 そして保健医療サービスや福祉サービスとの連携ということになれば,今度は「退院する等の患者が適切な環境の下で療養を継続できるよう配慮しなければならない」というこの配慮は,退院する方ですからそこから先病院がくっついていくわけではない.つまりそれは病院から知識,情報を出すということです.ということは何もかも喋るなと言っているわけではないということがここからも伺えます.しかし医療関係の方についての個人情報保護法というのは,もう少し適切な理解をしてもらわないと,あまりにもガチガチになりすぎて,一番大事なお互いの情報交換すらできない状況になっているというのが,実際の問題点だということです.


医療における情報の支援 1
※2007年4月1日の改正法施行で新たに医療情報提供に関する次のような事項が本法に盛り込まれた.
国や自治体は医療提供施設選択のための情報を容易に得られるよう提供する.
医療提供施設の提供する医療について,正確かつ適切な情報を提供するとともに,患者又はその家族からの相談に応ずる.

 ということで,「医療における情報の支援」ということになりますが,今回,この4月の改正で,初めて医療法に医療情報提供に関する事項が盛り込まれました.
 それはこうなっています.「国や自治体は医療提供施設選択のための情報を容易に得られるよう提供する」.これは10年,15年さかのぼったらしてはいけないと書いてあった内容です.つまり国が国保や健保だという保険内容の情報すら出すなと言っていたのは,それが出ると保険を使える医者,使えない医者ということになり,厚生省(当時)が出した同じ医師免許に差異が見えるようになってしまうので,どんなものがついているか教えないということで平等に医療を受けるというようにやっていたわけです.しかし今現在はそうではなく,情報を提供することによって患者さん側が自分に合う選択ができるようにその後押しをするという,まったく正反対のかたちに変わってきました.
 それともうひとつ「医療提供施設の提供する医療について,正確かつ適切な情報を提供するとともに,患者又はその家族からの相談に応ずる」.カルテや診療録は,昔は患者さんに出していいという医師の判断で出していました.これが今は逆です.望まれた場合,出してはいけないという理由が判断できるとき以外は出さなければいけない,このように逆に変わっています.これは個人情報保護法との関連があります.ですから今は患者さんからカルテを見せてくれ,それに関する私の診療録を見せてくれと言われた場合に,それを「いや,見せられません」と言うには,なぜ見せられないのかという説明ができなければなりません.もちろんその説明は「見せたくない」ではありません.これを見せることによって,患者さんの診療,施術に問題が起こるということがあらかじめ予想されているときだけです.
 初めからカルテや診療録をコピーして渡しているという場合もありますが,これには問題もあります.というのは,どのように診てどういう解釈ができるのかということを説明して渡すのならともかくとして,ただ配るというのは情報開示とは言えないからです.これは情報垂れ流しになるので,情報を出すときには,「これは何のことであって,どういうように使って,どういう疑問を感じたら質問してください」と,その質問に受け答えるための情報であって,ただ渡すとか流すという意味ではありません.それも,その本人,家族からの相談に応ずるということが求められているということです.


医療における情報の支援 2
患者の入院に対して,次の事項を書面にする.
患者の氏名,生年月日及び性別
その患者の診療を主として担当する医師又は歯科医師の氏名
入院の原因となった傷病名及び主要な症状
入院中に行われる検査,手術,投薬その他の治療(入院中の看護及び栄養管理を含む)に関する計画
その他厚生労働省令で定める事項

 「医療における情報支援2」として,入院における情報提供ですが,今回から次のものを書面にして渡し説明することになりました.
 まず「患者の氏名,生年月日及び性別」,「その患者の診療を主として担当する医師又は歯科医師の氏名」,それから「入院の原因となった傷病名及び主要な症状」,それと「入院中に行われる検査,手術,投薬その他の治療」,そういったものをきちんと書面にしなければなりません.これをやりますと,やってもいない検査が出てきたりすることもないわけです.それとこれから先,各病院では電子カルテに繋げていきますが,1回検査をしておいて,病院を変えてもう1回検査されることがないように,そのための基礎作りとも言えます.


医業等の広告制限
従来の医療法や告示のように1つ1つの事項を個別に列記するのでなく,一定の性質を持った項目群ごとにまとめて,「○○に関する事項」と規定するいわゆる「包括規定方式」を導入することにより,広告可能な内容を相当程度拡大することとしたものである.2007年4月1日から施行となった.

 「医業等の広告制限」ですが,実はこれが大きく変わりました.これまでの医療法での告示というのは,1つ1つの事項を個別に列挙してきました.「これとこれとは広告していい,それ以外は駄目」というものでした.そういった個別のものを今回やめまして,全体をまとめました.これを包括規定方式と言います.
 これは言い方がいろいろあるのですが,法学では列挙主義と包括主義というとわれわれは本当はやりやすいのですが,要は列挙主義というのは条文に並べたものだけに対象を限るものです.法の効力は「列挙されたものだけにかかりますよ」というのが列挙式です.つまりこれまでの広告制限がそうで,書かれて列挙されているものだけ広告していいというのが列挙主義です.
 それが包括主義に変わっていく.ここでは包括規定方式というように厚労省が言いましたが,これは「○○に関する事項」といって,その事項に入るものであったらどれでも広告していいというように,個別ではなくて,それに含まれるものであれば全部広告していいという内容に変わっています.要するに広告可能な内容が相当程度拡大するということがここでわかるわけです.これはすでに2007年4月から施行されています.


助産所の広告制限と嘱託医師
助産師の業務に関する広告の制限も,医業,歯科医業と同様の制限が置かれる.
嘱託医師については,厚生労働省令で定めるところにより,嘱託する医師及び病院又は診療所を定めておかなければならない(当該医療機関の住所・名称に関する書類,産科,産婦人科を有するとの書類,嘱託を承諾するとの書類等が必要).

 その例として,「助産所の広告制限と嘱託医師」を出してみました.「助産師の業務に関する広告の制限も,医業,歯科医業と同様の制限が置かれる」のですが,ひとつ「嘱託医師については,厚生労働省令で定めるところにより,嘱託する医師及び病院又は診療所を定めておかなければならない」,これは産科,産婦人科を標榜する医師は決められていますし,それから地域的にすぐに駆けつけられるような地域にいなければ駄目だということです.そういったものを書類にして,嘱託を承諾する書類,産科や産婦人科を標榜していることが証明できる書類,それらを揃えていかないと今度は助産所というものはできません.今までは医者が家に来てくれますよという名前を書いていればよかったのですが,これからはどこの誰で,その人は産科ですよという証明が必要になってくるわけです.
 というのは,これは飲食店などでも,実際に調理の資格を持っている人が名前貸しみたいなかたちでいて,本当は免許を持った人がその店にはいないとか,そういったことが問題になったこともありますが,医療の場合,当然これはもう駄目だということです.名前ではなくて本当に,実際に嘱託医師として助産師の問題が起こったときに対処ができる産科,産婦人科の医師であること,そしてどこの誰か,住所を書く,「ここからでは遠すぎるでしょう」ということとか,あらかじめ指導監督できるようなかたちでしかできないということです.それで初めて嘱託医師がいるということで助産所も開設でき,広告ができるという関係にしたわけです.


専門性の広告について(厚労大臣に届けた団体の場合) 1
イ 学術団体として法人格を有していること.
ロ 会員数が1000人以上であり,かつ,その8割以上がその認定に係る医療従事者であること.
ハ 一定の活動実績を有し,かつ,その内容を公表していること.
ニ 外部からの問い合わせに対応できる体制が整備されていること.

 さて,今度はもとに戻りまして一般の医療ですが,「厚生労働省に届け出た団体の場合の専門性の広告」があります.医師は専門医,学会の認定医の資格の多くを宣伝,広告できるようになっています.


専門性の広告について(厚労大臣に届けた団体の場合) 2
ホ 当該認定に係る医療従事者の専門性に関する資格(以下「資格」という)の取得条件を公表していること.
へ 資格の認定に際して,医師,歯科医師,薬剤師においては五年以上,看護師その他の医療従事者においては三年以上の研修の受講を条件としていること.
ト 資格の認定に際して適正な試験を実施していること.
チ 資格を定期的に更新する制度を設けていること.

 また専門性として広告できるためには,ホからチに示されているような,資格の取得条件の公表や臨床研修の受講,資格の認定に対する適正な試験の実施,またその更新制度といった条件が必要です.ですから学術,倫理観,そういったものを高めていくことが必要で,それが結局は,いずれ柔道整復師が国民に認知される前提になります.


医療の適切な選択に資すると広告できるもの 1
イ 当該病院又は診療所で行われた手術の件数
ロ 当該病院又は診療所で行われた分娩の件数
ハ 患者の平均的な入院日数
ニ 居宅等における医療の提供を受ける患者(以下「在宅患者」という),外来患者及び入院患者の数

 「医療の適切な選択に資すると広告できるもの」として,この春に施行された医療法の条文第6条の5に出てくる1から13の内容を掲示します.ここに書いてあるうちからいくつかをピックアップして,詳しく説明したいと思います.
 その中でこれは医療の資質という問題なのですが,今出ているところを見ていきますと,まずイの「当該病院又は診療所で行われた手術の件数」,これはいわゆる接骨医院で施術をどの程度やったのかということも含みます.それとロの「分娩の件数」,これは病院,診療所に関して言っています.ハの「患者の平均的な入院日数」,これは不用意に長期入院させているかどうかを見ています.それからニの「居宅等における医療の提供を受ける患者」で,これは「在宅患者」ですが,「外来患者及び入院患者の数」,これも広告できるようになりました.
 ということで,アメリカではすでに手術数や患者数をホームページに載せていますが,これを日本としてもやれるところは広告していいと法律上認めたということです.


医療の適切な選択に資すると広告できるもの 2
ホ 平均的な在宅患者,外来患者及び入院患者の数
ヘ 平均病床利用率
ト 治療結果に関する分析を行っている旨及び当該分析の結果を提供している旨
チ セカンドオピニオンの実績
リ 患者満足度調査を実施している旨及び当該調査の結果を提供している旨

 それ以外に今度は,ホ「平均的な在宅患者,外来患者及び入院患者の数」,それからヘの「平均病床利用率」,つまりその病院がどの程度稼動しているのかということも情報提供します.それとちょっと注目されるのが次のトの「治療結果に関する分析を行っている旨及び当該分析の結果を提供している旨」で,たとえば自分の病院に何人患者さんが来て,どの程度の日数で,どういう疾病等がどのように治ったのかということを分析しているかどうか,そういったものがあればそれは出してもいいということです.つまり医療の適切な選択に資する広告だということになるわけです.


その他広告できるもの
医療保険指定機関であること
医師,歯科医師以外の従業者の氏名,年齢,性別,役職及び略歴
外部監査を受けている旨
財団法人日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果(個別の審査項目に偏るものを含む)

 ここからは,「その他広告できるもの」として最近特に出てきたもので認められたもの,こんなものをやっていいというものです.まず「医療保険指定機関であること」,これは各職種,柔道整復師も含めてずいぶん緩やかになってきました.次に「医師,歯科医師以外の従業者(これは医療職と思ったほうがいいのですが)の氏名,年齢,性別,役職及び略歴」も載せられます.それから「外部監査を受けている旨」についてはこれから重要になると思います.特に病院の場合には,「財団法人日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果」で,これは医療機能評価機構以外にISOを受けているところもあって,両方持っているところも結構出てきました.


医療の安全確保
国,都道府県,保健所を設置する特別区は医療の安全に関する情報提供や研修を行うよう努めなければならない.医療機関の管理者も同様の努めを帯びる.
都道府県,保健所を設置する特別区は医療の安全の確保に関する事務を行うため,「医療安全支援センター」を設けるよう努めなければならない.

 そして「医療の安全確保」ということで医療過誤の話になります.医療安全に関する情報提供や研修はすでに国,自治体単位では進められていまして,年間2回とかの研修会を医療従事者,専門職,職員にするように義務付けられてきます.病院の中でも診療放射線技師などに聞くと,放射線を撮るときに横になるベッドがあるのですが,そこの乗り降りのところから実は説明義務があり,滑るのではないかとか,乗るときに危ないということを言っていますか,ということをやはり研修では言うそうです.
 臨床研修制度が今,医師と歯科医師に義務付けられましたが,十数年前から僕は柔道整復師も臨床研修制度をやるべきだと言っていました.それは努力規定でいいわけです.その当時は医師も歯科医師も努力規定でしたが,今は義務になりました.当時,柔道整復師は卒業してすぐに接骨院を開業する人はほとんどいませんでした.ほとんどが元の先生のところに戻って数年間,修業をされることが多かったわけです.ということはそのまま臨床研修をやっているようなものです.義務付けがなければ,たとえば1年,2年,臨床研修をするようにという条項を置くだけでも,法律上,柔道整復師は臨床研修をするということを位置付けているのだとなったはずなのですが,いまだに条文にはなっていません.でもまだ遅くはありません.この医療安全支援センターも含めて,そういったことから取り組むことも大事なことだと思います.


医療機関の開設
臨床研修等修了医師・歯科医師以外の者が診療所を開設する場合,助産師以外の者が助産所を開設する場合,当該地域の都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区の場合は市長,区長)の許可を必要とする.病床種別を変更する場合も同じ.

 臨床研修を医師は平成16年から2年間義務付けられています.歯科医師については平成18年から1年間義務付けられています.そして今はその修了したという証明がないかぎり,「医療機関の開設」はできません.開設するときは診療所であれば,昔は医師,歯科医師は届出で終わったわけですが,しかし今は臨床研修を受けていなければ,原則として自分で診療所の開設はできません.届出制ではなくて許可制になります.
 それと臨床研修「等」と言っているのは,実は今年からの制度なのですが,医師の再教育というものがあります.つまり医師が医業の停止や免許取消しになった場合には,再教育制度を受けて,その再教育の修了ということがあれば,元の医師の世界にカムバックできます.その「等」というのにはそれが入ります.再教育を修了した者,ということは厚生労働大臣から再教育を受けるよう命じられたにも関わらず,それを修了しなかった場合には,この医療機関の開設には含まれないという意味です.これは今年からの制度です.




「医師法」の改正


免許に関する処分および再免許 1
絶対的欠格事由(免許が与えられない場合)[a.未成年,b.成年被後見人,c.被保佐人][第3条].
相対的欠格事由(免許を与えないことがある場合)[a.心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの,b.麻薬,大麻またはあへんの中毒者,c.罰金以上の刑に処せられた者,d.cに該当するものを除くほか,医事に関し犯罪または不正のあった者(処分されたか否かを問わない)][第4条].

 これから医師法の話に入っていきますが,まず医師法の改正で大きく変わったのはこの「免許に関する処分および再免許」です.今までも「絶対的欠格事由」というものがありまして,「未成年,成年被後見人,被保佐人」についてはまず免許は与えられません.
 それに対して「相対的欠格事由」の「相対的」というのは比較ということです.何々と比べてです.そのときに誰が比べて決定するか,これは厚生労働大臣です.それと「欠格」ということですが,「欠格」の「格」というのは資格の「格」で,この「格」という字は役目を与えるということです.ということは役目が与えられないので「欠格」ということになります.つまり免許を与えられないということで,漢字的な意味ではそうなっています.


免許に関する処分および再免許 2
医師が,第3条の絶対的欠格事由の一つに該当するとき厚生労働大臣は,その免許を取り消さなければならない.また,第4条の相対的欠格事由のいずれかに該当するか,医師としての品位を損する行為があったときには,厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる[第7条第2項].
a.戒告
b.3年以内の医業の停止
c.免許の取消し

 「医師が,第3条の絶対的欠格事由の一つに該当するとき」免許は取り消されます.また「第4条の相対的欠格事由のいずれかに該当するか,医師としての品位を損する行為があったときには,厚生労働大臣は,次に掲げる処分をすることができる」.これが今年の春からできた制度です.「戒告」か「3年以内の医業の停止」か「免許の取消し」です.


再教育研修 1
第7条第2項で戒告,3年以内の医業の停止の処分を受けた医師と,免許の取消処分を受けた者で再免許を希望する者(取消処分を受けた日から5年を経過しない者を除く)に対し,医師としての倫理の保持(倫理研修)又は医師として具有すべき知識及び技能に関する研修(技術研修)として厚生労働省令で定めるもの(再教育研修)を受けるよう命ずることができる.

 「再教育研修」が行われる医師は,「戒告,3年以内の医業の停止の処分を受けた医師と,免許の取消処分を受けた者で再免許を希望する者」で,希望しなかったらそのままです.やはり続けたい,もう1回なりたいというときに,取消処分の場合には取り消しから5年以内にはこれができません.
 それともうひとつは「医師としての倫理の保持」という倫理研修と,それから当然,「医師として具有すべき知識及び技能に関する研修」と,その2つの研修で厚生労働省が定めるもの,これを再教育研修といいますが,これを受けるように厚生労働大臣から命ずることができます.


再教育研修 2
厚生労働大臣は,再教育研修を修了した者について,その申請により,再教育研修を修了した旨を医籍に登録し,再教育研修修了登録証を交付する. この再教育研修に応じない場合は罰則があり,修了の登録がなければ,臨床研修等修了医師とはならない.

 そしてこの「再教育研修」が終われば,その時点で再教育修了として修了証を厚生労働大臣はその者に対して渡し,医籍登録をします.この医籍登録ということは,医師としての業務ができるようになることです.これはよく医療職の国家試験でも出てきましたが,どこから業務ができるのかということが,結構,各職種の学校の学生は勘違いしています.学校を卒業しても国家試験を受かっても,それだけでは業務はできません.免許の申請でもできません.要はここです.医籍でも柔道整復師の籍だろうが薬剤師の籍だろうが,結局,登録されて初めてできます.ですから登録だけがすべてなので,免許証がどこかにいってしまっても業務ができるわけです.名簿に登録されているかどうかがすべてです.ですから結局,再教育研修を終えたらその名簿に登録してもらえるということです.研修修了した旨が登録されますから,ここから医業ができます.再教育研修修了登録証を交付する.この登録証はプラスアルファで要は名簿登録がすべてということです.
 そして「この再教育研修に応じない場合は罰則があり,修了の登録がなければ,臨床研修等修了医師とはならない」,このならないということは,自ら診療所を開設することができないということで,先ほどの臨床研修等修了医師の「等」にこれが当たるわけです.


医師の氏名等の公表 1
厚生労働大臣は,医療を受ける者その他国民による医師の資格の確認及び医療に関する適切な選択に資するよう,医師の氏名その他の政令で定める事項を公表するものとする(次の1〜4).
1.医師の氏名及び性別
2.医籍の登録年月日
3.法第7条第2項第1号 に掲げる処分に関する事項(当該処分を受けた医師であって,法第7条の2第1項 の規定による当該処分に係る再教育研修の命令を受け,当該再教育研修を修了していないものに係るものに限る)

 さて,今の再教育にも関係するのですが,実は今年から「厚生労働大臣は,医療を受ける者その他国民による医師の資格の確認及び医療に関する適切な選択に資する」ためにということで,「医師の氏名等の公表」ということが出てきました.これはまず医師の氏名,性別,医籍の登録年月日などが公表されるものです.
 また,先ほど出てきた第7条2項という欠格事由の話ですが,それに掲げる処分に関する事項の「規定による処分に係る再教育研修の命令を受け,当該再教育研修を修了していないものに係るものに限る」,というものが出てきます.つまりこの人は医師として医業ができませんということが,その間は氏名や性別などが公表されるため,隠れてやるわけにはいきません.これは今までと違って非常に厳しくなっています.
 先ほどの臨床研修の話もそうでしたが,このように医師法が厳しくなってきた場合,医師以外の他の職種は,自分たちから手を挙げないと追いつけないわけです.つまり,あいまいなところでやっているというのは,職種にとって決して嬉しいことではないわけです.それをなるべく避けて自分たちのほうに向かないようにとやっていくと,いずれ本当に誰も見てくれなくなります.規定が厳しくなるときは,厳しくなる法にどんな意味があるのかを知らなければなりません.これによって医師は結局,ステージが1つ上がります.もちろん裏には,あまりにも医療過誤その他の問題が起こったので,それをなんとか止めたいということもあったと思います.


医師の氏名等の公表 2
4.法第7条第2項第2号 に掲げる処分であって次のいずれかに該当するものに関する事項
イ 厚生労働大臣が定めた医業の停止の期間を経過していない医師に係る処分
ロ 当該処分を受けた医師であって,法第7条の2第1項 の規定による当該処分に係る再教育研修の命令を受け,当該再教育研修を修了していないものに係る処分

 もうひとつが「厚生労働大臣が定めた医業の停止の期間を経過していない医師に係る処分」,それから「処分を受けた医師であって,その再教育研修の規定における処分に係る再教育研修の命令を受けても,まだ修了していない者」,こういったものもすべて当たることになります.





「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改定


感染症法の改定
人権の配慮について不十分さを点を改善するとともに国際交流の活発化による新たな感染症の流入への対策を含めた危機管理上の予防向上も目指し,平成11年4月1日より施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 (以下,感染症法という)は2006年12月8日に生物テロによる感染症や総合的な感染症予防対策推進等のため一部改正が公布され,2007年6月1日に全面施行された.

 この6月1日より感染症法が改正されました.そのことについても簡単にお話しておきます.
 もともとは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」という長いもので,とても言っていられないので感染症法としておきます.これは平成11年にできた法律です.その後,生物テロによる感染症や,総合的な感染症予防対策を改めて作り直すということで,昨年12月に交付されて,この6月1日から施行されたものです.


感染症の分類 1 一類感染症
原則として入院等の行動制限を行う
エボラ出血熱,南米出血熱,クリミア・コンゴ出血熱,痘そう,ペスト,マールブルグ病,ラッサ熱

 感染症の分類が変わりました.一類感染症に入っているもの,これは「原則として入院等の行動制限を行う」,これは昔でいう隔離です.それはエボラ出血熱,そのあとの南米出血熱というものが新しく入っていますが,あとは皆さんもご存知のものだと思います.


感染症の分類 2 二類感染症
状況に応じて入院等の行動制限を行う
急性灰白髄炎,ジフテリア,重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る),結核

 それと二類は,「状況に応じて入院等の行動制限を行う」とあり,これはそのときに応じて厚生労働大臣から来ます.ここに結核が入っていることが注目です.実は前に入っていた腸チフスとかパラチフスというものがなくなっていると思うかもしれませんが,これは全部三類に移っています.この二類の結核ですが,6月1日の感染症法の改正で,結核が二類に入ったことで結核予防法が廃止になりました.もうありません.そして予防接種法の一類に結核が入ることになりました.ですから今,結核という単独の法規がなくなって,感染症法の二類と予防接種法の一類に結核が入ることになっています.そして前に一類だったSARSが二類になっていることもわかるかと思います.つまりあの騒ぎは医学的にも落ち着いてきたということで,一類から二類に下げました.


感染症の分類 3 三類感染症
状況に応じて就業制限等の行動制限を行う
コレラ,細菌性赤痢,腸チフス,パラチフス,腸管出血性大腸菌感染症(いわゆるO157)

 三類になると,先ほど言いましたコレラや腸チフス,パラチフス等が下がってきて,前は確かO157しか三類になかったと思います.そこに二類にあったものがダッと下がってきました.これは前から疑問もあったのですが,日本でコレラがそんなにあるのかと,このランク付けの仕方というのは,もちろん病気,疾病自体の激しさ,症状の重さもあるのですが,日本国内での発生率,罹患率という問題も含めて換算します.ですからコレラは重篤な疾病で当然そうなのですが,日本ではあまり聞いたことがない.ということは,もし入ってきて流行ったらということだけなので,状況に応じてと言っていて,ほとんど水際で終わっています.たまに東南アジア等の旅行者が罹ることがあったり,擬似で罹ったりすることもあるのですが,問題になるほどの数にはなっていないです.


感染症の分類 4 四類感染症
診断後直ちに届出が求められる疾患
E型肝炎,A型肝炎,黄熱,Q熱,狂犬病,鳥インフルエンザ,マラリア,炭疽,ボツリヌス症,野兎病とその他の既に知られている感染症であって,動物又はその死体,飲食物,衣類,寝具その他の物件を介して人に感染し,国民の健康に影響を与えるおそれのあるものとして政令で定めるもの.

 四類は「診断後直ちに届出が求められる疾患」となっているものですが,ここが変わっています.鳥インフルエンザで,マスコミはずっと鳥インフルエンザと言っていますが,法律上は抗病原性鳥インフルエンザになっていたはずです.その抗病原性が取れて鳥インフルエンザで統一しました.それ以外にボツリヌスとか野兎病などが入っています.ただそのあとに「その他の既に知られている感染症」と言っていますが,四類と五類というのは書ききれる量ではなくたくさんあります.その中で主要なものを今回,四類,五類ということで法律上でも整理をしました.さらにその中に載せるもので,実際に出てきても多分これで済むだろうというところで絞りました.この内容が「動物又はその死体,飲食物,衣類,寝具その他の物件を介して人に感染し,国民の健康に影響を与えるおそれのあるものとして政令で定めるもの」,したがって四類はこの内容に当たって政令で出てくるものということになります.


感染症の分類 5 五類感染症
診断から7日以内に届出が義務づけられている疾患
インフルエンザ(鳥インフルエンザを除く),ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く),クリプトスポリジウム症,後天性免疫不全症候群,性器クラミジア感染症,梅毒,麻しん,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(いわゆるMRSA)とその他の既に知られている感染症]であって,国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの.

 最後の五類ですが,これは「診断から7日以内に届出が義務づけられている疾患」ということでゆっくりしているのですが,とりあえず届けてくださいというレベルになっていまして,ここには鳥インフルエンザを除くインフルエンザという言葉ぐらいで,あとは変わっていません.


結核の取扱いについて
法改正後は,感染症法第7章の2として結核が加わり,保健所長等は期日期間を指定して,労働安全衛生法にいう事業者,学校の長又は矯正施設等に対して,結核に係る定期の健康診断の指示をすることができる.その指示を受け,市町村長は,結核に係る定期の健康診断を行わなくてはならない.また,その健康診断の対象者及び対象者が16歳未満か成年被後見人の場合は保護者に受診義務がある.そして結核予防法は廃止となり,予防接種法の一類疾病に結核を追加することとなった.

 では最後ですが,先ほど申し上げた結核をまとめておきましたので,これで最後にしたいと思います.この感染症法の改正後によって,感染症法の第7章の2に結核という欄が新たに設けられました.そこに保健所長等は期日期間を指定して,学校等も含めて結核の予防接種をしなさいということで,これは今まで結核予防法に出てきたものです.そして「結核に係る定期の健康診断の指示をする」,それと「その健康診断の対象者が16歳未満か成年被後見人の場合は保護者に受診義務がある」というように,旧結核予防法の内容がそのまま移行しています.そして一番大きいのは先ほど申し上げたように,結核が感染症の二類になって,予防接種法の一類に入り,結核予防法自体がなくなったということです.
 これが今一番新しい部分での改正になっています.



 一応,医療法を中心に医師法と感染症法について,簡単だったかもしれませんが,新しい改正についてお話させてもらいました.どうもありがとうございました.






資 料

医業等の広告 医療法第6条の5  2007年4月1日施行
 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関しては、文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる1〜13の事項を除くほか、これを広告してはならない。
1. 医師又は歯科医師である旨
2. 診療科名
3. 病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに病院又は診療所の管理者の氏名
4 診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
5. 法令に基づき指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨
6. 入院設備の有無、病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業員の員数、その病院又は診療所の施設、設備、又は従業員に関する事項
7. その病院又は診療所において診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他のこれらの者に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
8. 患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱を確保するための措置その他、その病院又は診療所の管理又は運営に関する事項
9. 紹介することができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者とその病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他、その病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項
10. 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、(ロ)の入院時に作成する書面の交付その他、その病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項
11. その病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限ります。)
12. その病院又は診療所に患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であって医療を受ける者による適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
13. その他前1〜12号に順ずるものと厚生労働大臣が定める事項

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