第1回 医療科学セミナー
公益法人制度改革について
前田和彦(九州保健福祉大学薬学部教授)
--公益法人制度改革三法(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)が2006年6月2日に公布された。2007年中に施行規則がまとまって、2008年度中に施行というスケジュールが予定されているが、前田和彦先生に、この公益法人制度改革法概要についてお話いただいた。

はじめに
公益法人制度改定のポイント
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
  ☆概  要
  ☆一般社団法人
  ☆一般財団法人
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
医療科学社会議室(2007年1月14日)


はじめに

 いま、公益法人制度の改革三法ということで3つの法律ができました。これには、小泉政権下の平成14年以後、官から民へ、行政から民間へという流れのなかで、民間の非営利部門の活動をいかに活発化させるかということがまず流れとしてありました。その趣旨としては、公益法人の設立はこれまで主務官庁の許可制であったわけですが、これを自由裁量による制度に改めて、まず登記のみで法人を設立できるようにするというものです。そのうえで、公益性というものを判断するわけです。つまり、法人の設立と公益性の認定を分離するということ、これがこの法律の最も大きな趣旨です。

 まず最初に、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pdf/0602ipan_syadanhouritsu.pdf)により、剰余金の分配を目的としない社団、財団については公益性の有無にかかわらず、準則主義を用いて法人格が取得できるようになりました。準則主義というのは登記のことです。今までは公益性を認定されるからこそ時間もかかり、なかなか設立できなかったわけですが、公益性の認定を分離することによって、少なくとも一般社団法人、一般財団法人という言葉になりますが、法人設立が非常に簡便になったという利点があります。

 そして「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pdf/0602koueki_houritsu.pdf)というのは、今度は公益性そのものを認定するということを掲げた法律です。公益法人の設立の許可および監督を主務官庁が行うという現行民法の制度を改めて、内閣総理大臣や都道府県知事が民間の有識者による委員会の意見に基づいて公益性を認める、つまり公益性の判断を主務官庁から民間有識者の委員会に変えるということです。もちろんこの委員会は内閣総理大臣、都道府県知事がつくるのですが、これまでのようないわゆる主務官庁における許可制、許可主義というものから脱却するということになったわけです。

 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pdf/0602seibi_houritsu.pdf)は、前記2つの法律を施行するにあたり関連諸法規が全部変わりますので、それらを整備するためのものです。医療法が変わると医療のだいたいの法規が変わりますが、それと同じと考えてください。

 本日の私のセミナーは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」がどのようなもので、どのようにつくられるのかということをまず知っていただくことと、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の内容との差異について概要を述べさせていただきます。


公益法人制度改定のポイント

 公益法人制度改革三法は昨年6月に公布され、今、各関連部局内で省令等の作成に入っています。私が厚生労働省の課長らと会った時点では、まず有識者に聞くということから始めていきたいという段階でした。何が問題になっているかというのは、各社団や財団にとって公益性の問題がまったく異なるということです。一般論で公益性を判断されるということになると、多くの社団法人は同業者組合に非常に近いところがありますので、公益性がないと判断されるかもしれません。そこで、判断基準はどうなるのだということが一つの問題ですが、ここはこれからになりそうです。

 日本医師会や都道府県の医師会もすべて公益法人にする方向でいるようです。基本的なことになりますが、民法上の法人格というのは、例えば日本医師会においても社団法人日本医師会と、東京都なり埼玉県にある医師会は別法人で、傘下にあるわけではないということです。おそらく他の医療従事者らの社団も両方に会費を払う制度は同じはずです。これを簡単にいうと、別行動が取れるということです。今までは窓口の一本化があったので、国が職能団体につき1つ認めてきた社団法人や、各都道府県で1つずつとやってきたものが今度は崩れるわけです。 ではまず、公益法人制度改定のポイントから見ていきたいと思います(図1)。また、公益法人制度改革については行革推進本部から解説(小冊子『公益法人制度改革の概要』)が出ています。ホームページからダウンロードできます(http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/pamphlet.html)。この公益法人制度改革の狙いは民間の担う公益というものを位置付けることです。

 現行の公益法人は法人設立のときに主務官庁の許可主義を取ります。つまり、設立と公益性の判断が、すべてその主務官庁の裁量によって決められているというのが現行制度です。各官庁の自由裁量で公益性の判断もやりますから一体的にやってきたわけですが、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」ではこれを分離します。

 まず法人設立自体は登記だけで可能です。もちろん細かい内容はありますが、大きな内容としては登記が通れば設立でき、一般社団法人、一般財団法人になります。そして今現存している法人は、とりあえず、この法律が施行されたあとは一般社団法人、一般財団法人となります。今後、公益法人になろうと思ったら改めて公益性の認定が必要です。

 これは一般社団法人、一般財団法人になったあとに申請をして、民間の有識者からなる合議制の機関の意見に基づいて、それを内閣総理大臣または都道府県知事が認定をするというかたちを取ります。こういうことで統一的な判断が公益性に基づいてのみできるので、これまでの縦割り的な行政からの脱却ができるというのが、行政側の説明だったと思います。そして、行政ではこの明確な基準を法定すると言っています。ということは、今やっているという段階です。そして今、決めようとする内容に漏れると公益性が認定されづらくなるということがあります。ですから、公益法人を目指す法人や組織は行政に対して今のうちに働きかけを起こすべきではないかと思います。端的に申し上げますと、職能集団が研修会を開催する場合、それが公開になっていれば公益性として認められる可能性があるわけです。公開にならずとも、それによって医療従事者の技量が上がり、一般国民の健康に寄与するということであれば、それは公益性を認めるべきなのですが、そのあたりはまだ決まっていません。医療の水準が上がること自体が公益性となるので、勉強会や研究会、学会なども認められると思います。いわゆる医療従事者の団体がよく行う「健康祭り」のようなものは認められるだろうということです。また、出版物が事業費の大半を占める場合、それによって技量の向上があって、国民の健康に寄与できるというように認定されれば可能です。最初の段階で公益性が認定されかどうかが勝負になりますので、今まで自分たちがやってきたこと、これからやろうとすること、それらが公益事業として認定してもらうためにどうするかが問題になります。団体によっては、政治家や役人や有識者らを招いてレクチャーを受けたりしています。いずれにしても、その基準をこれから練っていくことになるので、そのなかに入れるかどうかというのが多くの既存の団体が腐心しているところです。

 それと税金との関係ですが、現行制度では法人格と税の優遇は連動しています。というのはもともと許認可が一体化していたからです。これに対して、新制度の方は税との関係はまだ検討中ですが、認定を受けた公益法人については優遇するということです。ということは、一般法人は優遇がないかもしれません。

 この三法の施行は平成20年中に行われることが決まっているのですが、何月ということまではわかりません。それから現行公益法人の移行期間というのが5年間ありますので、その間に定款改正などさまざまなことをやればいいわけです。いきなり平成20年に全部行わなければならないという話ではありません。


一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

☆概  要

 まず、この法律のキーワードは、剰余金の分配を目的としないということ、公益性の有無にかかわらないということ、準則主義ということ、この3点です。

 行政では、剰余金の分配を目的としない社団法人および財団法人は登記さえされれば、法人格を認めるとしています。剰余金の分配さえしなければ、行う事業の公益性の有無にかかわらず、公益は一切考えることなく法人としての活動は可能であるということです。しかし、行政との関係ということを考えた場合には、これから一般社団法人、一般財団法人はいわゆる町内会と同じような扱いになっていくのではないかと思います。公益性がないものについて、行政側はこれまで行ってきたような社団との間の窓口的なものを外すということが考えられます。そういうことを考えて、医師会はすべて公益法人化に踏み切るのだと思います。ただこれは、おそらくほかの業種もすべて含めて予想されることで、2人以上いれば一般社団法人はつくれるわけです。ということは、一般法人になってもそれはきっかけに過ぎず、そこから公益法人に移らないかぎりは、活動の制限はないけれども効果はないということになりかねません。

 一般社団法人は社員2名以上で設立可能です。そして設立時の財産保有規制がありません。このあたりは「なんでもあり」です。ただし、社員総会と理事は必ず置かなければなりません。そして定款の定めによって理事会、監事または会計監査人の設置が可能です。また資金調達および財産的基礎の維持を図るため基金制度の採用が可能、社員による代表訴訟制度に関する規定を整備する、ということになっています。

 それに対して一般財団法人のほうは、設立時に設立者が300万円以上の財産を拠出しなければなりません。現行制度の民法においても、社団法人は人の集まりになりますが、財団法人のほうは目的に伴った財産の管理などを目的としており、このあたりはまだ変わりのない枠があります。したがって財団法人の場合には設立時に財産の拠出というものが出てきます。そしてこの財団の目的は、その変更に関する規定を定款に定めないかぎり変更不可です。ということは、財団法人をつくる場合には定款に「目的の変更」についての規定を置かなければずっと変えられないということです。それから「理事の業務執行を監督し、かつ法人の重要な意思決定に関与する機関として、評議員および評議員会制度」を創設していかなければなりません。評議員、評議員会、理事、理事会および監事が必置で、定款の定めによって会計監査人の設置が可能となっています。社団法人の場合には「社員総会及び理事」だけが必置で、それ以外はなくてもいいということです。

 この両方の法人についての通則では最初に「法人制度の濫用防止の観点から、休眠法人整理の制度及び裁判所より解散命令の制度に関する規定を整備」とありますが、これは現行民法にも同じような制度があります。通則2では「一般社団法人及び一般財団法人相互のほか、一般社団法人と一般財団法人との間での合併が可能」となりました。これは今までありませんでした。社団法人と財団法人の合併ということはなかったです。次に通則3ですが、「大規模な法人について、会計監査人の設置を義務付け」ました。そして通則4は「計算、定款の変更、清算、訴訟、非訟、登記、罰則等について所要の規定を整備」するということです。これは前から似ているものがありました。

 では、次に個々の条文を見ていきたいと思います。


☆一般社団法人

 まず「趣旨、用語の定義、法人格、住所等について定める」ことになっています。また、「法人の名称」では、名称中に必ず「一般社団法人」または「一般財団法人」という文字を用いなければならないとなっています。そして「他の種類の法人であると誤認されるおそれのある名称等」を使用することを禁止しています。通常の資格法における各医療従事者にも同じような規定があるので、理解がしやすいかと思います。

 一般社団法人の設立については、「社員になろうとする者(設立時社員)が共同して定款を作成しなければならない」とし、その定款は「公証人による認証を受けなければ効力を生じないものとする」と定めています。公証人による認証ということは大事な点になります。例えば医療従事者の資格はどこから効力を生じるかというと、国家試験を合格したときでも、学校等養成機関を卒業したときでもありません。名簿に登録されたときです。これと同じで、一般社団法人も財団法人も、公証人の認証を受けなければ法人としての設立の効力は生じないということになります。これは法的には非常に大切なことです。

 この一般社団法人の定款には「目的、名称、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名又は名称及び住所、社員の資格の得喪に関する規定、公告方法、事業年度」を記載しなければなりません。特にこの目的については、昔よく所管の官庁に許認可を求めに行くと細かな指示がありましたが、これからは許認可と公益性が分離されますから、目的についてはそれほど問われなくて済むのではないかと思われます。そして「社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しない」というのは、要するに、施行後は財産分与が一切ないというのが大前提です。

 次の「設立時理事及び設立時監事等の選任又は解任の方法、設立時社員、設立時理事又は設立時監事等の損害賠償責任について定める」ということが、実はこれから法人をつくろうとしたときに大事になります。設立した後の社員については、必ずしも損害賠償責任まで求められないということになっています。また社員については、「社員の経費支払い義務、任意退社、法定退社及び除名」について定め、そして「社員名簿の作成、備置き及び閲覧等」について定めなければなりません。

 社員総会についてですが、この社員総会が公益法人と一般の社団法人でちょっと変わります。一般社団法人等につきましては、「社員総会は、この法律に規定する事項及び一般社団法人の組織、運営、管理に関する一切の事項(理事会設置一般社団法人にあっては、定款に定めた事項)について決議をすることができる」が、「社員に剰余金を分配する旨の決議をすることはできない」ということで、これも大前提です。

 社員総会の招集手続等、議決権の数、決議の方法および特別決議事項、議決権の行使で、代理人、書面およびインターネットの電磁的方法は全部可能になるので、社員が総会に集まらなくてもできるということになります。ただ現実には、範囲やセキュリティ云々という話はまだ決まっていません。そして理事等の説明義務、社員総会の決議の省略そのほか社員総会の議事に関する事項について定める、ということが社員総会の内容になっています。もし社員総会以外の機関を設置するときは、1人または2人以上の理事は必置ですが、定款の定めによって理事会、監事または会計監査人等の設置も可能です。特に会計監査人というのは負債額が200億円以上になるような大規模一般社団法人については、会計監査人を置くこととなっています。

 理事、監事および会計監査人(これらが「役員等」となります)については、社員総会の決議によって選任する。また、法人と役員等との関係、役員等の資格及び任期(理事2年、監事4年〈定款で2年まで短縮可能〉、会計監査人1年、いずれも再任可)、役員等の解任等についても定めるということで、このあたりは現行法規とそれほど差はありません。

 理事会の職務として「業務執行の決定、理事の職務執行の監督、代表理事の選定及び解職」のほか、「重要な財産の処分及び譲受け等の重要な業務執行の決定を各理事に委任することができない」と定められています。つまり重要な財産の処分、譲受等については、個別の理事が勝手に決議することができませんので、必ず理事会を通すということになります。それから理事は「3箇月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならないものとするが、定款で毎事業年度に2回以上とすることができる」。これは理事会を設置した場合の一般社団法人です。

 それと、定款の変更についてですが、「定款の変更、事業の譲渡及び解散(解散事由、休眠法人のみなし解散等)」を定めなければなりません。これは必ず必要となるところです。定款で変更のことについて触れていないと、これはずっと変更できません。最初設立するときに、目的になりそうなものは何でも入れておくとか、業務一般について入れておくとか、定款の変更はこういう議決で変更ができるという一文を入れるかしておきませんと、設立したのはいいですが、そのままずっと続けなければならないということになります。


☆一般財団法人

 一般財団法人の設立は「設立者が定款を作成し、かつ、300万円以上の財産を拠出しなければならない」としています。

 この定款も一般社団法人と同様、公証人の認証を受けなければ効力は生じないものとなります。一般財団法人の定款は、やはり社団と同じく目的、名称等を記載し、「剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款は効力を有しない」ということになります。

 次に一般財団法人の機関の設置については「評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を必置」としており、これが一般社団法人と違うところです。評議員、評議員会、理事等も現行法とそう大きな差異があるわけではないのですが、評議員は「定款で定める方法により選任するものとするほか、法人と評議員との関係、評議員の資格及び任期(原則4年、定款で6年まで延長可能とする。再任は可である)について定める」こととする。そして評議員会は「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができ」ます。また、評議員会の召集手続き、決議方法、その他議事に関する事項についても定めるということです。「理事、監事及び会計監査人(役員等)は、評議員会の決議によって選任する」ことになります。法人と役員等の関係、役員等の資格及び任期、解任等についても定めるということです。次に、「代表理事は、一般財団法人の業務を執行し、法人を代表するものとする」とあるのが、ちょっと社団法人と違っています。

 定款の変更については、これも社団法人との違いがありまして、「設立者が定めた目的並びに評議員の選任及び解任の方法は、その変更に関する規定を定款に定めない限り、変更できないものとするほか、目的等の定めを変更しなければ法人の運営の継続が不可能又は著しく困難となる場合における裁判所の許可に基づく定款の変更については定める」ということになります。


公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律

 先ほどの「公益法人制度改革のポイント」(図1)にもあるように、公益社団法人は設立と公益性の認定が別にあるということです。この「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の概要については、公益目的事業を行う一般社団法人および一般財団法人は、行政庁の認定、これは公益認定ですが、これを受けることが可能です。この公益認定を受けた一般社団法人は公益社団法人に、公益認定を受けた一般財団法人は公益財団法人という名称が使用できます。

 また、公益法人並びにこれに対する寄付を行う個人および法人に関し、税制での措置があります。

 まずその公益認定事業ですが、第二条の四で「公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう」となっています。これは別表が出ていますが(LINK01)、要するにそれに該当するかどうかということがこれから認定のときに問題になるわけです。

 それから第五条に公益認定の基準を定めています(LINK02)。その最初に「公益目的事業を主たる目的とすること」とあります。公益が目的の法人であるということです。そうすると一般社団法人、財団法人のように公益性を問題にしなくてよい法人とは大きく異なります。また、8番目には「その事業活動を行うに当たり、第十五条(LINK03)に規定する公益目的事業比率が百分の五十以上となると見込まれるものであること」と定められています。つまり総事業の半数を公益事業としなくてはならないというところに大きな論点があるわけです。そうしますと現在の医師会でも看護協会でもそうですが、公益法人化した場合、その総事業費の50%以上が公益事業とみなされるか否かです。私利私欲に走るような事業はいっさい公益事業になりませんので、ある意味では公益法人にしようとするときには、現行法規の民法の公益法人よりもハードルが上がるのではないかということが一般的な見方になっています。というのは、現行の公益法人については総事業費の半分を公益事業に使えということは出ていないからです。

 したがって、これから公益法人化するときに、今やっている事業の見直しをして、またある意味では言い訳ではありませんが、こういう理由で公益性があるということが認められないと、一般法人のままということです。

 法人の機関については、同一親族等、及び他の同一の団体(公益法人等を除く)の関係者が理事または監事の3分の1を超えないこと、収益等の額が一定の基準に達しない場合を除き、会計監査人を設置していること、理事、監事および評議員に対する報酬については不当に高額なものとならないように支給の基準を定めていること、などがあります。それから法人の保有する財産については、他の団体の意思決定に関与することができる株式その他の財産は保有できません。「認定取り消しや合併により法人が消滅する場合に、公益目的取得財産残額に相当する額の財産を類似の事業を目的とする公益法人等に贈与する」旨を定款に定めなければなりません。つまり、もし自分たちができなくなったら、残った公益の目的なる財産は、他の公益法人にあげろということです。ここは現行法とは非常に違うところです。

 清算の際に残余財産は類似の事業を目的とする公益法人等に帰属させる旨を定款に定めなければなりません。これは、兄弟法人をつくっておいて、中身の理事もみんな同じで、それで肩代わりと考えたかもしれませんが、先ほど、法人の機関で出てきましたように同一親族および他の同一団体の関係者が3分の1を超えてはいけないとあります。ですから社団と政治団体が同じ人が理事だとか、そのようなことができないということです。これまではだいたい各会長なり理事がそのまま政治団体のほうでも同じ名前が並んでいたのですが、今度の公益法人化を睨んで医師会は全部分離しています。これは、都道府県レベルも同じです。

 認定に際しては欠格事由があります(LINK04)。暴力団員等が事業活動を支配している法人、(税金の)滞納処分が終了してから3年を経過しない法人、認定を取り消されてから5年を経過しない法人は認定を受けられません。また、その役員(理事、監事及び評議員)に暴力団員等がいたり、税金の滞納処分終了後5年を経過しない者がいても認定は受けられません。

 そうして公益法人として認定されると、今度は遵守事項があります。

 まず、先ほどお話したように、公益目的事業比率が100分の50を超えていることです。そして、遊休財産額が一定額を超えないこと。寄附の募集に関する禁止行為、というのは簡単に言うと「寄附の強制をしてはならない」ということです。

 2番目として、公益目的事業財産は公益目的事業を行うために使用しまたは処分しなければなりません。このほか、収益事業等ごとの区分整理、役員への報酬等の支給基準の公表、財産目録の閲覧等備え置くこと、行政庁への提出を遵守すること。

 公益法人になりますと今度は監督がついてきます。今まで許認可というと、そのあとはあまり来なかったのですが、今度からは、2つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置する公益法人、公益目的事業に2つ以上の都道府県の区域内で行う旨を定款に定める公益法人等については内閣総理大臣が、それ以外の公益法人はその事務所が所在する都道府県の知事が、それぞれ行政庁として監督する、ということになります。

 内閣府に内閣総理大臣の諮問に基づき、公益認定等の処分や政省令の改廃について答申を行う有識者からなる合議制の機関、これを公益認定等委員会と言おうとしているのですが、それを設置します。都道府県についても国と同様に合議制の機関を設置します。ですからこれまでみたいな主務官庁ではなくて、いわゆる有識者の委員会というものが非常に大きな決定権を持ってくるということになります。こういうことからも、今までと違って公益性に関し一定のレベルを確保したいということの現れになります。これらの合議制の機関の判断に基づいて、公益法人の認定をするほか、報告徴収、立入検査、改善勧告・命令、認定の取り消しなどを実施することになります。

 このように、一般の社団法人とか公益法人について非常に枠組みを簡素にして設立を簡単にしたのですが、一般社団法人、財団法人に比べて、公益社団法人、財団法人は大きな違いがあります。つまり公益性の認定については非常にハードルを上げたということになります。今までは一定の許認可があったのですが、裁量権が自由裁量で各主務官庁が持っていたのでバラバラでした。それをまず一本化して、公益性は真に公益となるように持っていこうとしているわけです。そうすると「法人がつくれないではないか」という話になってしまうので、「いや簡単にできます。でも一般法人ですよ」と。これはある意味でグレーな部分をなくしたいということがあります。これが吉と出るかどうかは、まだこれからです。

 以上、一般社団法人と公益社団法人について概要を述べさせていただきました。




LINK01

別表(第二条関係)
 一 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
 二 文化及び芸術の振興を目的とする事業
 三 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
 四 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
 五 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
 六 公衆衛生の向上を目的とする事業
 七 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
 八 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
 九 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵(かん)養することを目的とする事業
 十 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
 十一 事故又は災害の防止を目的とする事業
 十二 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
 十三 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
 十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
 十五 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
 十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
 十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
 十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
 十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業
 二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
 二十一 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
 二十二 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
 二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの



LINK02

(公益認定の基準)
第五条 行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請をした一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。

 一 公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること。
 二 公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。
 三 その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。
 四 その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人に対し、当該公益法人が行う公益目的事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。
 五 投機的な取引、高利の融資その他の事業であって、公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくないものとして政令で定めるもの又は公の秩序若しくは善良の風俗を害するおそれのある事業を行わないものであること。
 六 その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること。
 七 公益目的事業以外の事業(以下「収益事業等」という。)を行う場合には、収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
 八 その事業活動を行うに当たり、第十五条に規定する公益目的事業比率が百分の五十以上となると見込まれるものであること。
 九 その事業活動を行うに当たり、第十六条第二項に規定する遊休財産額が同条第一項の制限を超えないと見込まれるものであること。
 十 各理事について、当該理事及びその配偶者又は三親等内の親族(これらの者に準ずるものとして当該理事と政令で定める特別の関係がある者を含む。)である理事の合計数が理事の総数の三分の一を超えないものであること。監事についても、同様とする。
 十一 他の同一の団体(公益法人又はこれに準ずるものとして政令で定めるものを除く。)の理事又は使用人である者その他これに準ずる相互に密接な関係にあるものとして政令で定める者である理事の合計数が理事の総数の三分の一を超えないものであること。監事についても、同様とする。
 十二 会計監査人を置いているものであること。ただし、毎事業年度における当該法人の収益の額、費用及び損失の額その他の政令で定める勘定の額がいずれも政令で定める基準に達しない場合は、この限りでない。
 十三 その理事、監事及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及び退職手当をいう。以下同じ。)について、内閣府令で定めるところにより、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支給の基準を定めているものであること。
 十四 一般社団法人にあっては、次のいずれにも該当するものであること。
  イ 社員の資格の得喪に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的な取扱いをする条件その他の不当な条件を付していないものであること。
  ロ 社員総会において行使できる議決権の数、議決権を行使することができる事項、議決権の行使の条件その他の社員の議決権に関する定款の定めがある場合には、その定めが次のいずれにも該当するものであること。
   (1) 社員の議決権に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的な取扱いをしないものであること。
   (2) 社員の議決権に関して、社員が当該法人に対して提供した金銭その他の財産の価額に応じて異なる取扱いを行わないものであること。
  ハ 理事会を置いているものであること。
 十五 他の団体の意思決定に関与することができる株式その他の内閣府令で定める財産を保有していないものであること。ただし、当該財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがない場合として政令で定める場合は、この限りでない。
 十六 公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産があるときは、その旨並びにその維持及び処分の制限について、必要な事項を定款で定めているものであること。
 十七 第二十九条第一項若しくは第二項の規定による公益認定の取消しの処分を受けた場合又は合併により法人が消滅する場合(その権利義務を承継する法人が公益法人であるときを除く。)において、公益目的取得財産残額(第三十条第二項に規定する公益目的取得財産残額をいう。)があるときは、これに相当する額の財産を当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与する旨を定款で定めているものであること。
  イ 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人
  ロ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条に規定する社会福祉法人
  ハ 更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第六項に規定する更生保護法人
  ニ 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人
  ホ 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人又は同条第三項に規定する大学共同利用機関法人
  ヘ 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人
  ト その他イからヘまでに掲げる法人に準ずるものとして政令で定める法人
 十八 清算をする場合において残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは前号イからトまでに掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に帰属させる旨を定款で定めているものであること。



LINK03

第十五条 公益法人は、毎事業年度における公益目的事業比率(第一号に掲げる額の同号から第三号までに掲げる額の合計額に対する割合をいう。)が百分の五十以上となるように公益目的事業を行わなければならない。
 一 公益目的事業の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
 二 収益事業等の実施に係る費用の額として内閣府令で定めるところにより算定される額
 三 当該公益法人の運営に必要な経常的経費の額として内閣府令で定めるところにより算定される額



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(欠格事由)
第六条 前条の規定にかかわらず、次のいずれかに該当する一般社団法人又は一般財団法人は、公益認定を受けることができない。
 一 その理事、監事及び評議員のうちに、次のいずれかに該当する者があるもの
  イ 公益法人が第二十九条第一項又は第二項の規定により公益認定を取り消された場合において、その取消しの原因となった事実があった日以前一年内に当該公益法人の業務を行う理事であった者でその取消しの日から五年を経過しないもの
  ロ この法律、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号。以下「一般社団・財団法人法」という。)若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第三十一条第七項の規定を除く。)に違反したことにより、若しくは刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三第一項、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条、第二条若しくは第三条の罪を犯したことにより、又は国税若しくは地方税に関する法律中偽りその他不正の行為により国税若しくは地方税を免れ、納付せず、若しくはこれらの税の還付を受け、若しくはこれらの違反行為をしようとすることに関する罪を定めた規定に違反したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
  ハ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
  ニ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(第六号において「暴力団員等」という。)
 二 第二十九条第一項又は第二項の規定により公益認定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しないもの
 三 その定款又は事業計画書の内容が法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反しているもの
 四 その事業を行うに当たり法令上必要となる行政機関の許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等をいう。以下同じ。)を受けることができないもの
 五 国税又は地方税の滞納処分の執行がされているもの又は当該滞納処分の終了の日から三年を経過しないもの
 六 暴力団員等がその事業活動を支配するもの

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