1930年代の加速器の初期の発達段階において,すでに放射線治療における加速器の潜在能力が注目され,癌患者の急激な増加とともに,新しい改良された加速器を癌治療に利用する以前にも増した強い原動力が生まれた(癌患者は日本だけでも2000年には毎年50万人になるものと予想される)。その結果,過去60年間に世界で約4,000台の放射線治療用加速器が設置され,数100万人の患者の治療に利用された。これ以外に,約1,000台の加速器が放射線生物学や医学の研究に使用され,微量分析や診断法に新しい期待が寄せられている。今では,医生物学用加速器は荷電粒子加速器の中での最大のグループを形成している。これらの加速器は病院や医療施設に勤務する医学物理学者や物理学者にとって欠くことのできない道具になっている。このたび,医療科学社によって刊行された本書は,この加速器を利用するグループの人々に捧げるものである。
私は幸運にも1994年に高エネルギー物理学研究所(KEK,現在の高エネルギー加速器研究機構)に滞在する機会に恵まれました。ここで,粒子加速器の応用に関する研究を行い,美しい日本を知ることができました。尊敬と友情を分かち合える多くの素晴らしい人々とも知り合いになりました。遠藤有聲教授が私の最近の著書「医生物学のための加速器」の日本語訳を刊行して下さることを知り,私は非常に幸せです。
荷電粒子の医生物学における応用により,健康や生活の上で,現在,日本の数100万人の人々が恩恵を受けています。日本の加速器の総数(1997年の統計で1000台以上)の約70%が一般に医生物学に利用できるものと思われます。この点に関して,日本は世界の4指に入ります。私の著書の翻訳が日本の加速器技術の発展に少しでも寄与できれば,これ以上幸せなことはありません。
日本の読者のために私の著書の翻訳および編集に努力された遠藤有聲教授に最大の謝辞を表明します。また,日本語訳の出版にあたり,翻訳の細部にわたり監修して下さった稲田哲雄教授(茨城県立医療大学)に感謝いたします。最後に,本書をこのような素晴らしい装幀で出版して下さることに尽力された医療科学社の皆さんに著者より心から感謝いたします。
ワルシャワ,1998年1月
バルデマール シャーフ
Waldemar Scharf
ワルシャワ工科大学電子工学研究所教授
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