(1)QA(品質保証)といえばQC(品質管理)とそれを推進させるさせるための管理体制(administration)を含むものである。QAは全病院的,全国規模で行われるものであるため,本書のタイトルには品質管理(QC)を選んだ。また本書では,各専門団体が作成したQCプログラムを実施するためのテスト方法を説明することを目的としている。決して新たな基準を設けるものではない。もし,新たな基準があるとすれば,それは単なる筆者の個人的な希望である。
(2)本書に記した推奨値は各専門団体のガイドライン(指針)であり,JISの場合には規格としている。JIS規格のなかには規格値がなく,ただ測定法のみが記されている場合がある。JISは安全(誤診も含めて)を保つための機器性能の最低基準を規定しているだけで,機器の性能は各社の製品によって異なるため規格化していない。性能は市場原理で水準が保たれるからである。一方,各専門団体による機器精度の推奨値は最低値ではなく希望値であるため,JISやIEC規格より厳しい。団体基準のほかにJISやIECの規格が列記されているときには,QCの建て前から前者を採用することになる。しかし,購入後の受け入れ検査ではJISが優先する。
(3)QCテストでは機器の性能維持に重点がおかれ,初期の性能をベースライン(基礎値)として,経時的にこの機器性能の変動を調べる。このテストをconstancy test(一定性テスト)と呼ぶ。これはやはり性能評価に関するテスト項目であるので,たとえIECの推奨値が記述されていても,これは使用者がQCを行ううえでの単なる参考値である。このテストでは,初期条件を明確にしておきテスト方法にも一定性がなければならない。QCテストツールは再現性には優れているため,初期値を把握していれば性能の変動は十分に測定できる。
(4)予防保全には仕業点検(始業点検+終業点検)と半年または1年ごとに行う定期点検があるが,一定性テストでは両者の間に行う中間期点検が対象となる。その点検間隔は1か月から3か月の間となる。保守契約をしているときは,定期点検は点検業者によって行われるが,性能評価には一定性テストとの一貫性を保つために使用者(機器管理責任者)が行うことが推奨される。
(5)機器が故障してからの対策(事後保全)では,使用者はサービスコールを行うまえに,それが単純ミスによる誤動作か,本格的な故障なのか,また故障箇所はどこであるかを判断しなければならない。その判断の手助けとして,本書には機器故障対策の手順が掲載されている。これをもとに,他の機種にも各自で故障発見手順を作成されんことを期待する。
(6)QCテストの結果は章末のワークシートに記入するか,序に記したQCプログラムのワークシートに記入する。学校で行った実験結果は,本文と切り離されている[実験]という項目のなかの各表に結果を記入する。
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