IVRが盛んになればなるほど,高度になればなるほど,適応がひろがればひろがるほど,増えてくるものがある。放射線被曝である。
IVRにおける放射線障害を防止するために,1994年に米国FDA,1995年に日本医学放射線学会が注意を促がす文書を出し,2001年にICRP(国際放射線防護委員会)が勧告を出している。特にICRPからのPublication 85「Avoidance of Radiation Injuries from Medical Interventional Procedures」は,私自身がICRP委員としてdraft作成に参加し,2003年に出版された邦訳版にも関与した。Publ. 85には被曝防護に必要なエッセンスが集約されていると言ってよいが,IVRの基礎的事項から手技の実際までを含めた詳しい情報が盛り込まれているわけではない。そこで本書は,全般的なこととして,総論のあと,放射線の人体に対する生物学的影響について専門家の立場からわかりやすく解説し,また放射線皮膚障害の実際について皮膚科医による詳細な報告を掲載した。IVRの臨床としては,各領域のIVRの手技,最近の動向が示され,さらにそれぞれの領域における被曝防護についての多くの資料が取り入れられている。
IVRの臨床に関しての内容は基礎的ではあるが,専門の違う医師や診療放射線技師,看護師がIVRの臨床を少しでも理解できるよう配慮したつもりである。例えば,患者が心筋梗塞でアンギオ室に入り,今まさにPCIを受けようとしている状況では,技師,看護師も心電図や心エコーが少しでもわかるほうがいいという観点から臨床の入門編という意味で執筆してもらっている。
上記のことから,本書はIVRにかかわるすべての人に読んでいただきたい。本書により,IVRの臨床が損なわれることなく適正に放射線防護が行われ,IVRでの放射線障害が少しでもなくなれば望外の幸せである。
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