あとがき:基礎から学ぶ緊急被曝ガイド

 これまで足を踏み入れたことがなかった東北地方。福島に初めて訪れたのが平成23 年7 月。以来講演、シンポジウム参加あるいは原発での医療や健診等で半年間のうちに5 回福島を訪問した。福島県民の人柄や土地柄に触れ、新たな発見ができ、とても良い経験になった。恥ずかしながら、福島のおいしい農産物、海産物、名菓がたくさんあることを知らなかった。伊達市の桃は初めて購入させてもらい、「ゆべし」と「薄皮饅頭」は必ずお土産に買う。

 ある高校生が演劇で言った台詞がある。
   福島に生まれて、福島で育って、
   福島で働いて、福島で結婚して、
   福島で子供を産んで、
   福島で子供を育てて、
   福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。
   それが私の夢なのです。

 私も市民講演で引用したが、途中でなぜかしら感極まり、言葉を詰まらせてしまい、最後まで読めなかった。今でも、読むと涙が出てしまう。日本では過去になかった原発事故がもたらした福島へのいわれのない風評被害や偏見、これまで何事もなく普通に暮らしてきた生活が一変したことへの悔しい思いは、私も同様に感じるためかもしれない。

 放射線に対する不安度をアンケート調査したところ、一般市民、医師、授業で放射線を習ったばかりの学生の順に不安度は高かった。私のできることは放射線の正しい知識をわかりやすく提供し、現状の放射線影響に対する不安を少しでも取り除ければとの思いから、「放射線学入門(一般向け緊急被曝ガイド)」をホームページ上で4 月から更新してきた。さらに、この本が皆さんのお役に立てば幸いである。

 がんばっぺ! 福島。がんばろう、日本。