はじめに:診療放射線技師のための院内英会話

 診療放射線技師の教育が専門学校から短期大学、四年制大学へと移行し、ほとんどの採用者が大卒である。最近では、修士取得者も多く採用されている。また、がんプロフェッショナル養成プランやキャリアアップのため、修士課程、博士課程に進学するケースも年々多く、高学歴化の傾向にある。海外での発表や英語での論文の話題が日常的に話されてきている。さぞかし日常英会話もアップ?? 残念ながらさほどでもないようである。そのギャップは?? 原因の追究はともかく、英語での論文作成が容易でも、聞く、話すについてはまだまだのようである。

 この書は、主に病院のX 線検査室でのやり取りをPlain Englishで書き上げた本である。さらに、発音の表記は最も原音に近いカタカナ書きで、アクセントもわかるように表示している。また、検査室ごとに会話が組み立てられており、どこの検査室での会話が必要なのか? すばやくそのページが検索できる工夫もしている。一見、カタカナ表記でインテリジェンスのないように思われがちだが、少しの勇気があれば、あまり勉強しなくても、誰でも、簡単で、即座に、通じて、話せる英会話をめざした書にするためである。

 かのジョン万次郎が書いた日英辞典は、自分の耳で聞いた英語をカタカナ書きにしたものである。夜(ナイ)、朝(モヲネン)、宵(イブネン)、冬(ウインダ)、寒い(コヲル)、である。文章ではWhat time is it now !(掘った芋 いじるな)と書いている。ジョン万次郎の世界にもどり使える英会話を基本に考えた書である。

 タイトルは、「Plain English for X-ray」非常にわかりやすいタイトルにした。しかし外国人にはすぐには理解しにくいかも知れない。そのために、サブタイトルをもうけた。サブタイトルは、「How to communicate in English with patients Radiodiagnostic tests for the Radiological expert」で、著者らの本書に対するイメージを含めて英作文した。書の表紙には、英文のタイトル、英文のサブタイトルのみを表記している。

 さらに、診療放射線技師をthe Radiological Technologist ではなくthe Radiological Expert とした。診療放射線技師の業務は、放射線診断系・核医学検査系・放射線治療系・放射線管理系の大きな四つの分野に機能分化しているが、放射線全般にわたる専門家でもある。

 The Expert は、the Technologist を包括した診療放射線技師業務の実態に即していると考えたからである。

 この書は、外国人の患者さんが来るかもしない診療所・病院・検診に携わるthe Radiological Expert や、すでに外国人の患者さんが来られている施設においては確認のために、the Radiological Expert をめざす学生には、シミュレーションのためのテキストとして役に立つことを願って止まない。

 刊行にあたり、本書の企画段階から最終の校正まで常に的確な助言いただいた医療科学社の古屋敷信一社長、編集に尽力された斎藤聖之氏には、記して感謝の意を表したい。

2010 年3 月吉日

首都大学東京 客員教授
国際医療福祉大学 保健医療学部 特任臨床講師
国立がんセンター中央病院  放射線診断部
診療放射線技師長  田仲 隆