はじめに:MRI原理とMRS

 この本は今西好正氏の2作目です。前作『放射線科医のものの見方・考え方』同様、若手医師・技師向けの自家製テキストがベースになっていますが、その面影はわずかに残るのみで、新作といえるものに仕上がっています。今回も、すべてのシェーマは今西先生が自ら作成しました。スーパー放射線科医である彼にとってさえ、この書き下ろしは苦行だったようで、途中かなり疲労していましたが、無事出版に至りました。

 この本は、MRI原理を心から納得・理解していただくことを目的としていますが、説明が冗長になり、かえってわかりにくくなった部分があるかもしれません。若干心配ではありますが、じっくり読んでくだされば、必ずやこの本の価値を実感いただけるでしょう。

 ところで、この本の表紙や、章と章の間には、素敵な絵が多数掲載されています。米国で活躍されている画家Yumiko Uenoさんの作品です。「難解とされるMRI原理にあえてチャレンジする読者の皆さんを癒したい」という私の申し出に対し、多くの作品を快く提供してくださいました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 MRI原理をわかりやすく説明する試みはひとつの冒険ですが、さらに、暖かく胸を打つYumikoさんの作品の力を得て、今回の本は、過去に類をみない医学書になったと思っています。

 オリジナリティあふれるこの本を、是非最後までお楽しみください。

徳原 正則



 今回、今西先生から『MRI原理とMRS』のお話を頂いたとき、お受けすべきか、大変迷いました。というのも、私が研修医のときに、ある上司から「MRIの原理もわからないのに、MRIの画像を読むな!!」と叱られたトラウマがあったのです。 お手伝いをさせて頂くにあたり、その上司の顔がチラチラと浮かび、冷や汗がでる思いでした。これまでも私なりに一生懸命理解しようとつとめてきましたが、生物・化学で大学受験した私には恥ずかしながら特有の記号や公式が出てくると、どうしても理解が進まず……また別の教科書を買い、の繰り返しでした。

 この本の特徴は、記号や公式の記載はほとんどなく、物理の苦手な者にも丁寧すぎるほど細かく「MRI原理の基礎」を説いていることだと思います。また、MRSに関しても、ここまで詳細な記述の教科書もないと考えております。

 放射線科医(特に女医)のなかには、私に似た先生も実はおられるのではないでしょうか? 私は公表してしまいましたが、そんな先生がいらっしゃったら、こっそりとこの本を手にとって何度も読み返されてください。信号パターン認識に陥りがちなMRI読影が楽しくなることと思います。

 最後に、いつも私の支えとなってくださる今西先生と徳原先生、そして父に感謝いたします。

小谷 博子