はじめに:ひと目でわかる腹部・消化管エコー実習テキスト『基礎編』

 超音波ほど病院間に隔たりのある検査はないように思われます。ある病院では腹痛で来られた方に、CTやMRがfirst choiceであることを耳にするとき、超音波検査のskill dependenceを考えずにはいられません。「総論賛成、各論反対」の現実を垣間見る思いがします。その理由はCT、MR画像が超音波像に比べ格段の進歩を遂げている面があるからだと思います。しかし、超音波の手軽さ、リアルタイム性、害のなさ、情報の多さでは他の検査をも凌駕するものがあります。このreasonableな検査が二の次とされる悲しい現実を考えている矢先、学生さんに超音波実習を行う機会がありました。何人かの学生さんが分厚い本を片手に、モニタに表示される画像と探触子の位置を見比べながら不便な実習光景を目の当たりにしました。実習の時間経過と共に超音波検査の威力を感じたらしく、見違えるような感動のまなざしを覚えました。この人達に何とかcompactで手軽にみられる「超音波実習用テキスト」があれば不便さの幾分かは解消され、興味の継続が期待できると考えたからです。本テキストは検査を行うのに必要最低限の事柄を述べ、文字数は少なく簡便性を心がけました。構成は走査部位と、解剖図を対比し、得られたエコー像は大きく見易いものとし模式図を加えました。この冊子を「基礎編」とし、もう一つの冊子「ひと目でわかる腹部・消化管エコー」を「実践編」と考え2部構成でまとめてみました。この両冊子が相補し、超音波検査について学ばれる学生さん、検査を始められる先生方に、超音波の手軽さと診断価値を少しでもご理解していただく糸口となり、本検査の普及に何らかの変化をおよぼすことが出来ればと願うものです。諸先生方のご叱正、ご批判をいただければ幸いに存じます。

 末筆になりましたが、本冊子をまとめるに当たり、浜松南病院消化器病・IBDセンター長花井洋行先生はじめ消化器科および外科の先生には温かな御指導ご声援を賜りました。衷心より厚く御礼申し上げます。

2009(平成21年)初春
  杉山 高